愛に恋

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輪違屋糸里 (下)  浅田 次郎

下巻ではいよいよ近藤一派と芹沢一派の争いになるわけだが、どうも様子が今までとは少し違う解釈になっている。近藤と芹沢は仲違いしたとも思えず、意外に仲がいい。二人して祇園に出かけ飲んでは遊び、話し合いも親密だ。然し、会津中将に呼ばれた近藤一派は本当に直々に芹沢一派の粛清を下知されたのだろうか。新見錦切腹に関してはどうだろう。祇園新地の料亭「山緒」に近藤一派が押しかけ切腹させられたという従来の説とは違って、初めから土方らと一緒に料亭に行ったことになっている。そして大雨が降る深夜、土方ら数人が泥酔している芹沢、平山、お梅を殺害、別室にいた平間は逃亡し、吉栄と糸里も難を逃れたはずだが、本作では初めから芹沢、平山暗殺の片棒を担いでいることになっている。惨劇を極めた現場では平山の死体は胴体と首が離れており、芹沢と同衾していたお梅も巻き添えで首を切られたいうが、現場は文字通り血の海のはず。その後始末が書いてあるものを読んだことがないが、八木邸の主はどう思ったことだろうか。上巻の時にも書いたが、私はその現場となった部屋を見学しに行ったわけだ。