愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

火定 澤田 瞳子

先ず、この名前からして読めなかった。ひとみこでは可笑しいと思いつつ調べてみるに「とうこ」と読むんだね、知らなかった。次に劈頭からして難しいのでどんな経歴の持ち主かと思いきや、同志社大学大学院文学研究科博士課程前期修了だってさ。このぐらいの学歴がないとダメなのか。数々の受賞歴を経て本作を含め何度も直木賞候補になり、ようやく『星落ちて、なお』で受賞。なかなかの実力者だね、最近思うに女性の時代小説における躍進は目覚ましいものがある。併し、天平時代を扱った本は初めて読んだ。何からなにまで現代とは用語が違うのでかなり苦心した。話は天平7年から同9年にかけて大流行した疫病(天然痘)を扱ったもので、史実に基いたものらしい。我が身を顧みず、治療に当たる医師たちと、混乱に乗じて、病に効くというお札を民に売りつける者「天平パンデミック」を舞台に人間の業を描き切った長編でなかなか面白い。彼女の作品は歴史小説ばかりなので、まだ他の本が読みたくなった。