愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 ゴーギャンとゴッホ

ゴーギャンゴッホはまるっきり正反対のように見えて、実は共通点も少なくなかった。二人ともアカデミックな教育を受けていない。画家を目指したのが20代後半。絵を描くことへの強い執着。エキゾチシズム、放浪癖など表面的な相違は多々あるものの根源的なところでは非常に近い。聖俗が混在し、清濁を併せ持つゴッホの絵、補色を意識した色遣いと呼吸が込められた筆運び、その斬新さ、躍動感、弟のテオさえ兄の途方のなさに恐れをなしていたのに、どうしたわけかゴーギャンとはそりが合わず出て行ってしまった。その日、いくつかの角を曲がったところで、後ろにぴたりと着いて来る足音に気がついて振り向くと、右手にナイフを持ったゴッホが立っていた。その後、ゴッホが慌てて逃げだしたのか、ゴーギャンが驚いて逃げ去ったのか判らないが、ゴッホは自らの耳を切り落として馴染みの娼婦に届けた。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。耳を切り落とすって大変な痛さだろう、尋常な精神状態とは思えない。美術史上前代未聞の出来事だ。気がふれていたのかどうか私には判断が付きかねるが、いずれにしても哀しい出来事だね。生前、認めらられなかった作品と孤独、名声を得る日は直ぐそこだったのに。おやすみなさい、また明日。