愛に恋

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渦 妹背山婦女庭訓 魂結び 大島真寿美


第161回直木賞受賞作。「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描いた比類なき名作! この人物は近松門左衛門と縁戚関係にあるわけではないが、大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた成章は、末楽しみな賢い子供だった。浄瑠璃好きの父に手をひかれて、芝居小屋が立ち並ぶ大坂・道頓堀の竹本座に通い出してから、浄瑠璃の魅力に取り付かれ、父からもらった近松門左衛門の硯に導かれるように物書きの世界に入って、浄瑠璃本を書いた人らしい。私見では少しくど過ぎるようなところも多々あるが、友人で歌舞伎の世界に入った者と競うように、人形浄瑠璃作者がどういうものか少し解かったような作品だった。