2023-09-23 櫛挽道守 木内 昇 時代小説(読書録) 本作は中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞受賞作の大作で読むほどに唸るような作品だと思う。 私が審査員でも間違いなく一票を入れたであろう文句なしの小説ではなかろうか。 多少、時代考証や方言など難しいところもあるが、ストーリーなどどこまでも読みごたえのある作品で、時代小説の好きな人にはお薦めの逸品かと思う。 幕末、木曽山中の小さな宿場町。 年頃になれば女は嫁すものとされていた時代、父の背を追い、櫛挽職人をひたむきに目指す主人公登瀬の一途さと、貧しい一家の情感と生活がよく表れて心を打つ。