愛に恋

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いかれころ

新潮新人賞&三島由紀夫賞ダブル受賞のデビュー作。 昭和58年に四歳だった女の子「奈々子」から見た南河内に暮らす代々の農家一族「杉崎家」を現在から回想して書いている作品で、二十四歳の娘に縁談が持ち上り、女性は二五までに見合い結婚する者も多い時代。本人の考えを他所に、結納金や世間体を巡り親戚中の思惑が忙しくぶつかり合う。分家に暮らす四歳の菜々子はその喧噪をじっと見つめている様子だが、まるで一族のドキュメンタリーを小説にしたような作品で、一般家庭の日常会話をそのまま描写している味わい深いものでいい小説だ。