愛に恋

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ダメオのアニマル・ラブ Part.30 

「ちょっと、動かないでよ」「早くしてよ、こんな格好でじっとしてらんないよ」「煩い、月に1度の体重測定なんだから我慢しなさい」「別に太ってないよ、先月と同じだと思うよ」「それは体重計が決めること。アンタは少しの間、大人しくしてればいいの」「こんなこと猛禽類には必要ないよ」「今の時代はね、動物の健康管理もしっかりしていくのが私たち動物愛護センターの役目なのよ、少しはありがたく思ったらどうなの」「それならもうちょっとマシなエサを頂戴よ、特にイカのスルメはもう要らないよ」「予算がないの我慢しなさい」「またそれか」

「何やってるの、起きなさいよ」「それが上手く起きられないんだよ」「ちょっとゲンちゃん、明後日の方向いてないで起こしてあげてよ」「そんなの自分で起きなさいよ」「ちょっと横から押してよ」「ダルマじゃあるまいし自分で何とかしなさいよ」「ねえねえ、ホントに頼むよ。押してくれれば直ぐ置き上がれるからさ」「だいたいコーギー犬は重たいんだよ」「だから言ってるじゃないの、押してくれれば簡単に置き上きるんだって」「もうまったく鬱陶しいわね」「いいからゲンちゃん、押してあげなさい」「はい、分かりましたよ。よっこらしょ」

「何だって、また北がミサイル撃ったって。ほっとけほっとけ、奴らの言うことはいつも大袈裟なんだよ。全土を火の海にするだの、今まで経験したことのないようななんて、あんなことばかり言ってるが結局どこかの海に落ちて終わりだろ、どうってことないよ」「で、あとどのぐらいかかるんだ」「そうだな、ざっと25分ぐらいかな」「25分か。ちょっとそこのマクドでコーヒー飲んで来ていいかな」「おお、そうしてくれ、そこで立っていてもしょうがない」「よし、何か飲むか」「それないらアイスコーヒーを頼むよ」「分かった。買ってくるよ」

「ねえねえ、こんな感じ」「何が」「見てて、ちゃんと見てて」「だから何を!」「分かるでしょ。人間がやってる新体操よ」「アホくさ」「ネコがやってるんだよ」「何を」「だから新体操だっていうの」「朝からやめてよね、くだらないことは」「くだらなくないよ。こんなこと出来るネコなんか他にいないでしょ」「そんなの自慢でもなんでもないよ」「自慢だよ、ネコ界随一だよ」「何を言ってんだよ。そんなのはね、単なる背伸びだよ」「分かってないね、うちの旦那は」「とにかくさ、朝は忙しいんだから、あっちへ行ってよ」「もう、やってらんない」

「おお、どうしたんだ!」「うん、生まれつきでね」「事故に遭ったわけではないんだね」「子供頃は分からなかったけど、大きくなってからは他の犬との違いが分かって哀しくなっちゃって」「そりゃあそうだろう、分かるよ」「何しろ目が一つしかないのが一番辛いからね」「うん・・・」「だから散歩で他所の家の犬に会うのが嫌だから、もう何年も行ってないんだよ」「なるほど」「以前、散歩中に吠えられたことがあったから、もうショックで、それ以来行かないことにしている。「で、今は幸せなのかい。良かったら家に来ないか」「さあ」「本当に!」

「おい、何だよこのざまは」「仕方ないんだよ。隣の悪ガキ権蔵が僕を見つけると、いつも脅したり上から飛び掛かってきたりするから、今度見つけたらとっちめてやろうと思っていたら、今日は先にこっちが見つけたから、懲らしめようと思って逃げるあいつを林の中で追いついて喧嘩になったんだよ」「でどうなった」「もう、お互いにくんずほぐれつ大げんかだよ。最後はあいつの足に噛みついてやったら、さすがに痛かったのか垣根を超えて逃げて行ったよ」「じゃ、勝ったわけだな」「うん、なんとかね。あれ以上やったらこっちも体力の限界だったよ」

「早く食べなさい」「嫌だ」「何を言ってるんだ。贅沢言うんじゃない」「毎日毎日、こんな葉っぱみたいなものは嫌だ」「バカ言うんじゃない。野菜は健康にいいのだよ」「それは人間の話。もっとカツオの缶詰とか煮干しみたいなものはないの」「ない、そんな物はない」「それならいいよ。僕、隣に移るから。弥三郎なんか毎日、キャットフード、それも高くて美味しいもの貰っているんだから。それに、良かったらうちに来て一緒に住めばいいのに、とまで言ってくれているんだよ」「あ、そうかいそうかい。そう来るんだね。恩を忘れて」「・・・」

「もう、いつまでやってるの」「ちょっと待ってよ」「いい加減にしてよね」「ダメだって、これを作成して9時までに会社に送らなくちゃいけないんだから」「そんなの後でいいじゃないさ」「ダメダメ」「腹が減っては戦ができんと云ったの誰よ」「そりゃそうだけど、これは別だよ」「じゃ先に僕のエサだけ用意してよ」「分かったからちょっと待ってて」「もう待てないってば」「あと10分」「嫌、絶対にいやだ。先にちょっとお皿にエサを盛るだけじゃない」「煩いなも~」「はいはい、ささっと早くはやく」「分かったよもう。これでいいでしょ」

「何見てんだよ」「敵の偵察隊が近くに来てるんだよ」「敵!」「そうだよ、権蔵一味だよ」「何を偵察してるんだ」「俺たちのグループの動向だよ。あわよくば、縄張りを乗っ取り、下手したら子供をさらおうという恐ろしいグループだからね。場合によってはこちらも戦闘態勢に入らないと」「子供をさらってどうしようというんだ」「育てて将来の戦闘員にするのさ。多ければ多いほど強いグループになるからね」「殺し合うのか」「死ぬ場合もあるけど、多くは重症を負うからね。そしたら戦線離脱で退却だよ」「おい、頑張れよ」「死に物狂いの戦いだ」

「あ~ァ、まったく退屈だ。少し暖かくなってきたけど、やることないし、毎日こうやってぼ~としていてもつまらないし、何かいいことないかな。ちぇ、いいオンナは通らないし、少し出歩いてスケこましにでも行ってこようかな。この辺りにはパッとしたオンナなんかいやしねえ。ったく、どいつもこいつもしょうがねえ奴ばかりだ。冴えない街だねここは。はぁ~眠たい。少し仮眠したら出かけるか。」