「ガブゥ」「ギャ~、痛い~」「最近は人間も猫も悪さをする奴が多い。こうしてくれるわ」「もうしません、ごめんなさい」「ぐぅー」「痛いいたい」「もうしないか」「しません。もう絶対にしません、ホント、ごめんなさい」「このクソ猫が分かったか」「はい、分かりました」
キィ~~~、「しまった、ネコ轢いちゃった。大変だ、いきなり出てくるからだよ、まったく。こっちだって被害者みたいなもんだよ、勘弁してよね」
「何さ、なんか文句あるの」「いや、別にないけど」「じゃ何でそんな目で私を見るの」「いや、ちょっとぎこちないんからね」「いいじゃないさ、たまには鶏と同乗なんてめったにないんだから」「まあ、それはそうだけど」「仲良く行こうよ」「分かってるよ」「パパはまだかな」「もうそろそろ来るでしょ」
「ちょっと、早くしてよ」「煩いわね、待ってよ便秘なんだから。なかなか出ないのよ」「お~い、早くしないと漏れちゃうよ」「煩いってば、静かにしてよ。気が散るとよけい出ないんだから」「こっちは出そうなんだよ」「も~う、集中させてよ」「いらいらいら」「あんまり見ないでよ、恥ずかしいから」「見てないよ。見たくもないわ」「それより早く」「う~ん、もう少し。出そう」「いいから早く」「う~ん、出た、4日ぶりよ」「そうかいそうかい」「おい、早く代われよ」「ちょっとまってと。よし、お待たせ」「はいはい、どいてどいて」
「ちょっと、アンタ誰さ」「・・・」「返事しなさいよ」「・・・」「いやに目が出っぱってるわね」「・・・」「ええ、不細工な顔だけど、言っとくけどね、私はいイケメンの雄じゃないと興味がないのよ、どうなのよ返事しなさいよ」「・・・」「ふざけた奴だねまったく」「・・・」「どっか行ってよ。私の近くにいないで。みんなに勘違いされるじゃないの」「・・・」「分かった、私がよそへ行くわ、もう二度と私の前に現れないでよ。じゃあね」「・・・」
「こんにちは。これからここが君の新しい家だよ」「広いね、もうあんな狭いゲージの中は懲りごりだよ」「そうだよね分かるよ」「ネコだってストレスが溜まるしノイローゼになるからね。ありがと」「だけど、沢山いるネコの中からどうして君を選んだと思う」「そりゃ、あれでしょ。僕が一番人懐っこいし、元気で可愛いからに決まってるよ」「まあ、それもあるけど、やっぱり君の髭だよ」「ひげ、ひげなんてみんなあるよ」「あるけど、その髭じゃないんだよ」「じゃ、どのひげよ」「君は知らないだろうけど、君には珍しい顎髭があるんだよ」「あごひげ?、あごひげって何」「顎のあたりが真っ黒なんだよ。ウクライナの大統領にそっくりだから、これから君の名をゼレンスキーと呼ぶからね」「ゼレンスキー!」
「なんだ、どうしたんだ。風邪引いたのか」「夕べから悪寒がして寒くてしょうがないんだよ」「だから言ったじゃないか。夜は寒くなるから何か被って寝ろよって」「うん、すっかり忘れて睡魔に負けちゃったんだよ」「まったく嫌んなっちゃうな。どうすんだ」「今日、一日寝てれば大丈夫だと思うよ」「風は万病の元だぞ」「アンタさ、私のことばかり言うけど、前から言ってるように少し痩せたらどうなのさ」「頑張ってダイエットしてるよ」「運動不足なんだよね、だいたい歩かないでしょ」「歩いてるよ」「家のなかだけでしょ」「分かったわかった」
「ミーコ、暖まってきたい」「うん、だいぶん暖まってきた」「良かったよかった」「やっぱり外は寒いからね」「ネコには堪えるよ」「ここの家で飼ってもらうわけにはいかないのかな」「さあ、どうかな。犬が1匹いるし飼い主はどう判断するか」「エサ代もかかるしね」「うん、物価高でそんな余裕はないかもしれないよ」「また外で生活するのは嫌だね」「うん・・・」「ねえアナタ、頼んでみてよ。何とかなりませんかって」「決して悪さはしませんからと言ってね」「うん」「よし分かった。ここはひとつ思い切って頼んでみるよ」「うん、お願いね」
「みなの者、よ~く聞け。我々はいつまでも人間に飼われているわけにはいかないのだ」「お~!」「人間社会は暴力と疫病と汚職、セクハラ、盗撮、虐め、戦争、避難民と混乱に満ち、今や核戦争の危機にも立たされている。これ以上、この美しい星を汚染させてはならない」「その通りだ」「人間どもは過去数百年、我々の友である数々の動物たちを絶滅の道に追い込んできた」「怪しからん」「そこでだ、我々ハムスターとしては、これ以上、地球を人間に任せておくわけにはいかない。ハムスター教の教祖としてはもはや看過できない域に達したのだ」「教祖さま~」「今こそ立ち上がって人間どもに鉄槌を下す時が来た」「やってしまえ~」「皆の者、我を崇めたまぇ~、そして地球上の全ハムスターに大号令をかけて進軍する時が来たのじゃ。我に従え~」「オゥ~」
「ちょっと、アンタ何者」「失礼しちゃうわね。アンタこそ何者なのよ」「アンタこそって、何よ、その長い首」「何よ、その小さな首」「いくら何でもアンタ、バカでかいはね」「よく言うよ、何よこの小さな体。蹴っ飛ばしちゃうよ」「やれるものなら、やってみなさいよ。あたしはね、蹴られたぐらいではどうってことないのよ」「大体あんた、何食べて生きてるの」「そんなことより自分のこと心配しなさいよ。そんな図体が大きくてどうやってエサを取るのか不思議だわ」「へへ~だ、こっちはね、背が高いから木の実なんか簡単に取れるのよ」「あたしは雑食だからエサなんか苦も無く取れるから心配なんかないわ」「精々、長生きするこったな」「ありがと、あんたに言われなくても亀は万年生きますから大丈夫、それよりあんた、首折らないように注意しなよ」「そんな野暮な心配はいらないよ。じゃあな、達者で暮らせ」「あばよ」