愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

ダメオのアニマル・ラブ Part.54

「いいか小源太、これは犬の沽券にかかわる決闘だからな、子犬とウサギ、この縄張りをウサギに明け渡すかどうかが懸かっているんだぞ、決して負けるわけにはいかないんだ。分っているだろうな」「分かってるって、こんな子ウサギなんか一ひねりだよ」「言ったな小源太、今日こそ積年の恨みを果たしてくれるわ、尋常に勝負しろ」「のぞむところだ、お前なんか叩きのめしてくれるわ」「へへ、知らねえな、ウサギは小さい分だけ小回りが利いてすばしっこいのよ、さて、お前にこの私が捕まえられるかな」「小癪な、ほざき負ったな。よし行くぞ」「おう」

「よ~し、ダメオ・アニマル牧場のものは全員集合したか」「メヘヘヘ」「ワンワン」「おい、アヒルたち、こっち向けよ」「クワァ、クワァ」「ブタはこっち向いてか」「ブヒブヒ」「よし、今日は記念写真だからな、撮るぞ。ほら、こっち向いてみんな。いくぞ。パシャ」

「おお神様、マギーは今回初産なんです。お願いします、母子ともに無事でありますように。何匹生まれてくるか判りませんが子供たちも元気いっぱいで産まれてくることを願っています。アーメン、ソーメン、冷ソーメン」「何をふざけておるか。お前の正面に立っておる木には南無阿弥陀仏という札がはってあるではないか。このバカ者めが」「あぁそうか。すいません。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏、よろしくお願いいたします、南無阿弥陀仏

「良い本は私の人生の出来事です。」スタンダール赤と黒」そうか、偉い人は赤と黒という本を書くのか。なぜ白と黒じゃいけないんだ。

「よ~し、全員揃ったな」「へい」「いいか、よく聞け。俺たちは戦に負け続け、ついにこんな海沿いにまで追いやられ、明日の飯にも困る一統になってしまった。このままではドン・松五郎一家の名折れだ。先代に対しても顔向けができねえ。そこでだ、この際、総勢で、ども安一家に殴り込みをかける。 今夜、夜討ち朝駆けする予定だ。奪われた縄張りを取り戻す最後のチャンスだと思え。いいか、この戦いに敗れたら最後、もう我が一家は終わりだ。後がないものと思い、死に物狂いで戦え。分ったな野郎ども」「お~う」

「どうしたブタ公」「どうもこうもないよ」「何がだ」「もう生きて行く気力をなくしたんだよ」「何だって、まだ生まれたばかりじゃないか」「生きていてもろくなことはない」「バカ言うなよ、まだ子供のくせに」「もういいんだ、ほっといてくれ」「そうはいかないよ、こんなへたばっているお前を見たら」「君たち人間は僕を育てるなんて善人ぶっていうけど、結局は大きく育ててあとはブタの生姜焼きだろ」「・・・」「ほら見ろ、何も言えないだろ。僕たちは食べられる運命なんだ」「よし分かった、個人的に君を引き取るよ、安心しろ、殺さないから」

「まいったな、こう降られちゃ何処へも行けやしない」「ママ、お腹空いた」「分かってるわよ、私だって空いているのだから」「いつまで待てばいいの」「それはお天道様に聞いてみなさい」「寒くなってきた」「そうね、困ったわね」「このままここにずっといるの」「何処かもっと大きな木の下に移動した方がいいかしら」「だけどこの辺には大きな木なんてないよ」「仕方ないわね、アンタたちしばらくここで待ってなさい。何か食べる物を探してくるから、動いちゃダメよ。ずっとここで大人しくしてるのよ。必ず何か持ってくるから」「うん分かった」

「よ~し揃ったな」「ミーコがいないよ」「ええ、ネコのミーコか、ホントだ、どこ行った」「しらな~い」「ええ~ウマに、ウシに、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、あの野郎、またサーシャおばさんのところにサンマを盗みに行ったんだな。ちきしょう、あれほど言ったのに、今日という今日は許さねえぞ。おいみんな、そこを動くな、そのまま待ってろ。首根っこひっ捕まえ戻ってくるから」「分かったよ、早く帰ってきてよ」「やっろ~」

「六匹生んだの」「はい」「たくさん生んだね、さあ、どうしようかしら」「何がどうするの?」「だってさ、そんなにたくさん生んだら、みんな飼うわけにはいかないでしょ」「ええ、じゃどうするつもり」「うん、お隣さんに上げるとか、知り合いの人に貰ってもらうとか」「嫌だよそんなこと、家族がばらばらになるなんて」「だってみんなしてることよ、一匹だけ残すからいいでしょ」「嫌だいやだ」「しょうもないわね」「ぜんぶ飼うの、私が立派に育てるから」「うん・・・、困ったわね」「困らない」「じゃ、乳離れしたらよそに出すからね」「ダメ」

「どいした」「ピヨピヨ、分からない」「何あったの」「ピヨピヨ」「なにあれ」「ピヨピヨ、分からない」「分からない、分からないじゃわからないよ」「ピヨピヨ」