愛に恋

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決算! 忠臣蔵 中村義洋 山本博文

私が生まれて初めてひとりで映画を観に行ったのは、まだ小学生の頃で、何と東映の『忠臣蔵』だった。出演は東映のオールキャストで長谷川一夫市川雷蔵, 勝新太郎, 山本富士子, 京マチ子, 淡島千景, 木暮実千代, 若尾文子, 中村鴈治郎(二代目), 黒川弥太郎, 志村喬, 川崎敬三, 鶴田浩二, 川口浩等々で、今は若尾文子を除けば全員が亡くなられた。そこまで『忠臣蔵』が好きなら一人で行ってこいと、父にお金を貰って近くにあった東映専用の映画館に行ったのが事の初めで、歴史好きの父にしてみれば、してやったりのことだっただろう。以来、東映大映東宝と日本人の好きな忠臣蔵は作り続けられ、知らない人のいない判官びいきの決定版と言っていい。併し、本書は硬派のイメージの強い忠臣蔵が、お笑いのような形をとっている。更に嘘か真か知らないが全て関西弁で書かれている。例えば内匠頭殿中で刃傷に及び、即日切腹と聞いた内蔵助の第一声は「なんでやねん」で始まる。討ち入りの時に叩くのは山鹿流の陣太鼓ではなく、ドラでいいじゃないのと家臣に言われる場面もあって確かに笑う。のっけからイメージの違うコメディのような忠臣蔵に、これは面白そうだと喜ぶ私。章立ても割賦金や藩札など借金や退職金など全部払い終わっていくら残るという筋書きだ。徐々に減っていく金と討ち入りまでの帳尻合わせなど、見事な展開に今までにない忠臣蔵を是非とも映画でも観たくなる作品だった。因みに現在の金にすると大石内蔵助の年収は69,230,000円という、かなりの高給取りだ。