愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2017-01-01から1年間の記事一覧

神保町 古本街

神保町古本街に行って来ました! 制約時間がある中、ここまで来た限りは何か買わなくてはいけないと焦り、一軒、二軒、三軒と見て周り運命の出会い、または捜索願い中の本は無いかとドキが胸々しながら書棚に目を集中、しかしありません。 四件目、ここは以…

村山槐多全集

そもそも画家村山槐多を知っている人など見たこともないが、私自身、彼の名を初めて知ったのは平成25年、入院先の病床の上だったような気がするが、さて、それすらも定かではなくなった。 健診、食事以外、さしてやる事の無い退屈病に罹っていた私は病床でも…

「幕末」に殺された女たち 菊地明

この本には自害、自殺、獄死、病死、戦死、刑死、惨殺と様々な事情で幕末期に死に至った22人の女性が書かれているが、これはほんの一例で実際にはもっと多くの女たちが命を落としている。 例えば会津戦争での女性の犠牲者は233人。 幕末維新が趣味で、今まで…

時代の一面 大戦外交の手記 東郷茂徳

日本人にとって著名な外務大臣といえばいつの時代でも陸奥宗光と小村寿太郎ということになるのだろうか。 中学の歴史教育でも確か、この二人しか習った記憶がない。 いずれも戦勝国日本の外相ということで殊更にクローズアップされていると思うが、明治以来…

アウシュヴィッツ収容所 ルドルフ・ヘス

何年か前にNHKで放送された『トレブリンカ 発掘された死の収容所』という番組を確か録画してあったと思い、探していたら、そのDVDがあり安堵した。 トレブリンカとはワルシャワから北東約90kmに存在したユダヤ人絶滅収容所のひとつだが、証拠隠滅のためナチ…

閉経記 伊藤比呂美

司馬遼太郎さんや吉村昭さんが亡くなって以来、現代作家で好きな人と言われても特にいない。 寧ろ最近では作者よりタイトルや内容で選ぶことの方が多い。 ということで今回の1冊は文壇ではそれなりに有名な人らしいが、私個人は全く知らない人だが経歴を見て…

ショパン紀行 あの日ショパンが見た風景 堀内みさ 堀内昭彦

知らなかったが、ショパンの心臓は現在でもワルシャワ聖十字架教会という所の主柱に納められているらしい。 小さなプレートにはこのよう書かれている。 1945年10月17日 フレデリック・ショパンの心臓は、ワルシャワに戻ってきた 第二次大戦勃発でワルシャワ…

女妖記 西条八十

本書は昭和33年、西条八十が66歳の時から書き始めた小品11編を収めた色懺悔のような本で、11人の女との情痴関係を告白形式で書き連ねたものだが、いやはや、西条先生は相当な艶福家であらせられる。 失礼ながら荷風も八十も、さして男前とは思えぬのが、今ま…

李香蘭の恋人 キネマと戦争 田村志津枝

私はテレビ・ショッピングや通販などで物を買うことはまずない。 どうしても現物を見ないと買えないタイプなのだが例外もある。 絶版本など、いくら古書店巡りをしても見つからない書籍はAmazonで購入しているが、これが時に失敗を招く。 例えばこの本『李香…

泡沫の35年―日米交渉秘史 来栖三郎

故事に「勝家の甕わり」という言葉があるが、日本人は昔から坐して死ぬより討って出るのを潔しとする習性があるのだろうか。 例えば浅井長政は籠城せずに果敢に討って出たし、石田三成は家康が上杉攻めで大坂を留守にした間を狙って挙兵した。 真田幸村は凡…

墨東の堀辰雄 その生い立ちを探る 谷田昌平

貯金額と違って読書量というのはどうもあてにならない。 貯蓄はその気になれば増えるわけだが読書は仮に一千冊読んでも、それに見合った知識が蓄積されるかと言えば少なくとも私の場合はその限りに非ず。 読んだ先から心太方式のように忘れてしまう頼りなさ…

クラクラ日記 坂口三千代

著者、坂口三千代は坂口安吾の妻で「クラクラ」とは安吾没後、三千代が開いたバーの名で命名者は獅子文六。 その三千代が10年にも亘って書き連ねた安吾の思い出の記が本作だが、臨終当日のことが詳細に書かれているので抜粋したい。 そして十七日の朝、茶の…

切断—ブラック・ダリア殺人事件の真実 ジョン・ギルモア

この事件に関しては映画化もされているらしいが私は見てない。 通称、ブラック・ダリア事件とは1947年1月15日、ロサンジェルスで女優志望のエリザベス・ショート(22)が激しい拷問の末、腰の辺りから胴体を真っ二つ切断、血を抜かれ、両脚を大きく広げたま…

大川周明と狂気の残影 アメリカ人従軍精神科医とアジア主義者の軌跡と邂逅 ダニエル・ヤッフェ

30数年前のこと、近江の国、義仲寺にある芭蕉の墓を詣でたことがある。 芭蕉の弟子が詠んだという、「木曽殿と背中合わせの寒さかな」の由来通り、木曽義仲と芭蕉は向かい合うように眠っていた。 だからというわけではないが、今回の主役、大川周明は東京・…

狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ 梯久美子

最近、注目しているノンフィクション作家が二人いる。 『永山則夫 封印された鑑定記録』を書いた堀川恵子と『硫黄島 栗林中将の最期』の著者梯久美子で、堀川恵子には関連本として『死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの』という作品があり、梯久美子には『…

自由学校 獅子文六

今回の文六作品は昭和25年5月から朝日新聞に連載されたもので、時代を反映して敗戦、焼け跡、講和条約などの文言が頻繁に出てくるが、さすがにリアルタイムで書いているだけあって説得力がある。 終わりに作者自身も書いているが獅子文六の代表作とは何なの…

詩人の妻 生田花世 戸田房子

著名な作家の自殺というのは他国と比べて多いのか少ないのか知らぬが、日本で夙に有名な自殺者と言えばまず以下の順になる。 有島武郎 (大正12年6月9日) 芥川龍之介(昭和2年7月24日) 太宰治 (昭和23年6月13日) 三島由紀夫(昭和45年11月25日) 川端康…

流星ひとつ 沢木耕太郎

『お熱いのがお好き』の一場面、電車の中で向かい合って座るトニー・カーティスに「本が逆さまだよ」と指摘されたり、自宅で柄にもなくラフマニノフを聴いているマリリン・モンローという人はわざと、あのような白痴美人的な役どころを演じていたと思うが、…

甦る『ゴンドラの唄』―「いのち短し、恋せよ、少女」の誕生と変容 相沢直樹

私にとっての読書とは趣味以上、義務未満みたいなものだが出来得る限り、自分の身の丈に合ったサイズの本を選別して読みたいと思っている。 あまり度を越して不釣合いな本は当然の如く理解の範疇を超え苦痛の領域に誘う。 本題に入る前に一言、苦言を呈した…

バルト海の死闘 C.ドブスン

読書は格闘技だと言われるがまったくだ! 眠気、疲れに打ち勝ち、読んだら備忘録としてブログに書く。 しかしこれが時に難儀を極める。 果てさて、今日は、この壮大な物語をどのように書くか現段階では判然としないままだが、とにかく書き始めるとする。 か…

コンビニ人間 村田沙耶香

まあ、こんなことを言っては失礼な話しだが、そもそも、芥川賞受賞作に名作というものがあるのだろうか。 私も全ての作品を読んだわけではないので一概に断定できるわけではないが、どうも物足りなさを感じる。 これで終わり! みたいな読後感をいつも味わう…

東京ローズ ドウス昌代

私にとってローズと言えばジプシー・ローズと東京ローズ以外、まず思い浮かばない。 その東京ローズだが日系アメリカ人で戦時中、連合軍に対しラジオを通じ、何やら謀略放送めいたことをやっていたぐらいの浅い知識しかないが、ただ、東京ローズとは複数女性…

藤田嗣治 本のしごと 林洋子

本来、美術や絵画には門外漢の私がこんな本を読んでもあまり意味がないのだが、古書市で見つけ、勢いで買ってしまった。 藤田の80年を超える生涯で、日本やフランスなどで関わった書籍、雑誌を対象に表紙絵や挿絵、新たに公開された旧蔵書、または国内の公共…

石原莞爾 マッカーサーが一番恐れた日本人 早瀬利之

かれこれ20年ぐらい昔になるだろうか。 NHKスペシャルで張学良を特集し、何と本人が登場したから驚いた。 まるで浦島太郎に遭遇したような気持ちだったが、キャスターのインタビューに満100歳を迎えた学良は矍鑠とした風貌で記憶も正しく受け応え。 この歴史…

カレーライスの唄 阿川弘之

ポツダム大尉という言葉があるが、ポツダム宣言受諾後に階級を一つ進級させることで、阿川弘之は支那方面艦隊司令部附として終戦を迎え、この、ポツダム大尉として焼野原となった郷里広島に帰った。 その後、志賀直哉に師事して作家になるのだが、本題を前に…

夢二日記〈1(明治40年~大正4年)〉

幕末以降、多くの人の日記が刊行されているが、大別すると二種類に分かれる。 死後、公開されることを想定して書かれている場合と、そうでない場合。 例えば啄木のローマ字日記の中には、他人に読まれてはまずいという記述がある。 女郎相手の話しなので、こ…

幕末維新懐古談 高村光雲

永井荷風はこんなことを言っている。 余裕のない現代人にはけっして承継する事の出来ないそういふ昔からなるつまらぬ職業は、手慣れた其の老人の死と共に永劫この世からはなくなって仕舞ふのである。 江戸情緒をこよなく愛した荷風散人らしい言葉だ。 おそら…

戦前の昭和を探して! 大阪中崎町

すっかり変わってしまった世の中 いつの時代も見続けて来ました 二度と戻って来ない昭和や 帰り来ることのなかったあの人も 築年数は忘れましたが みんなが生きていたあの頃を私は知っています 郷愁を探し求めるアナタ さあ、この扉の中で新しい思い出作りを…

血盟団事件―井上日召の生涯 岡村青

自分で選んどいて何だが、まったくストレスの溜まる本だった。 昭和初期の歴史書には必ずと言っていいほど登場する血盟団事件と井上日召。 とにかく、この人物を紐解くには少なくとも大正期の米騒動から五・一五事件までの世相を知る必要がある。 私にとって…

黙って行かせて ヘルガ・シュナイダー

ナチ戦犯の中でも取り分け悪名高い人物として有名な医師、ヨーゼフ・メンゲレは アウシュビッツ収容者から「死の天使」と言われ恐れられていたが戦後、忽然と姿を消す。 イスラエル諜報機関は必要にメンゲレを追うが、メンゲレは追跡を逃れ1979年、海水浴中…