愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 死にたいと誰でも一度は思うものだ

死にたいと誰でも一度は思うものだという。それは本当に死を願っている場合もあれば、より正確には「今の人生から逃げ出したい」という願望のこともある。他人の人生は輝いて見える。死さえ、今の人生よりましに見えてしまう。しかし、どんな人生にしろ、はたから見ているだけでなく、実際にそれを生きるようになれば、いずれは嫌気がさしてくるものだ。死後の世界がもしあったとしても、菊池寛の短編小説「極楽」に出て来る老夫婦のように、念願だった極楽世界の蓮の台(うてな)に座りながら、退屈して地獄の話ばかりするようになってしまう。古い独房か新しい独房かの違いしかない。という考え方は、絶望的ではあるが、つまりは死を考えてみても仕方ないということだ。カフカは自殺を試みたことはない。その昔、私は自殺を試みたことがあったが、今考えれば馬鹿々々しいことに思える、生きていて本当に良かった。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。おやすみなさい、また明日。