愛に恋

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ダメオのアニマル・ラブ Part.32 

「うわ、君はトラの子か!」「違うよ、ネコだよ」「うっそ~、トラだよ」「違うってばネコだっていうの」「ネコならなんでそんなトラみたいな顔なんだ」「生まれつきだらしょうがないよ」「ええ、そんなバカな。見たことないよこんな縞模様のネコなんて」「見たことなくてもちゃんとここに僕が証明してるじゃないか」「違う、絶対に違う。どこかでトラの血が入っているはず」「そんなことないって、両親も祖父母も親戚もみんなネコだから」「おかしいな、そんなことはないはずだ。人間は襲わないのか」「バカな、人間なんか襲わないよ」「そうか」

いい月だな、なんか寂しさを誘うな。今夜はどうしよう、ミーシャも何処かに消えたし、もう戻ってこないだろう。今宵のねぐらを探さないと。今までのところはミーシャの思い出が詰まっているから、もうあそこに戻るのはよそう。さあ、今日からはまた新しい生活が待っている。さあ、行くか。

「寒いな」「おい、寄れよれ、もっと引っ付け」「おお、さぶさぶ」「寒の戻りか」「そうだな、寒いのは嫌いだ」「昨日はあんなに暖かかったのにな」「ホントだよ、もう桜の季節なんだから勘弁してほしいよな」「これが済んだらまた暖かくなるよ、そうぼやくな」「そす願いたいね」「まったくだ」「おい、みんな少し寝ようぜ」「そうするか」

「おいトニー、今日こそ決着をつけるぞ」「おお、願ってもないことだ」「あとで吠え面かくな」「俺のセリフを取るな」「今からでも遅くはない。俺の縄張りから出て行け」「オズワルド、いいかよく聞け。この領地は曾祖父の時代から伝わる正真正銘の我が家の領地なんだ。それをお前の祖先が分捕りやがった。だから俺は立ち上がったのだ。今こそ祖先の恨みを晴らしてやるとな」「何を生意気な、領地争いで負けたのはお前たちの方だ。今さら何を言うか」「だから取り戻す時が来たのよ。行くぞ」「おう、どっからでもかかって来い」「え~い!」

「サリー、そろそろ寝ようか」「うん、まだそんなに眠たくないけどジミーがそう言うなら寝てもいいよ」「眠たくないの」「うん、今日昼寝したからね」「あそうか、何か話す」「そうね、そういえば佐吉を最近見ないわね」「ホントだ、あれいつだったな最後の会ったのは」「確かたばこ屋の角でサンマの骨を齧ってたでしょ、あれが最後じゃない」「そうだそうだ、そんなもんじゃ腹の足しにはならないよ、なんて話してたあの時だ」「ねえねえ、話変わるけど、私たち本当に仲がいいね」「あたりまえだよ。死ぬまで一緒さ」「運命の出会いだもんね」

「おい、まさか君も犬じゃなかろうな」「もちろん犬ですよ」「犬、そんな小さな体で」「もちろんですよ、犬というのはね、もう無数の種類がいるんですからね」「それにしても小さいな。子供か」「一応、子供です」「そうか、で、君の親は」「居ません」「居ない、どうして」「分からないけど、どっかへ行ってしまいました」「それは困るじゃないか、これからどうするんだ」「それも分かりません」「そんなんじゃ生きて行けないよ」「じゃ俺んちに来ればいいよ。主人に頼んでみるから、子供の君一匹ぐらい飼ってくれるよ」「いいんですか」「いいよ」

「元気出してよ」「うん、頑張るよ」「いつも私がついてるから大丈夫よ」「そのつもりなんだけど」「少し痛いの」「ちょっと痛いね。今日、寝れるかな」「睡眠導入剤打ってもらう」「そうだね、あとで打ってもらおうかな」「そうしなよ。そしたら私も安心して寝れるから」「今日はここに泊まっていくの」「もちろんよ、退院するまでいるよ」「悪いね」「なに言ってるのよ、あたりまえじゃないのさ」「早く退院して何か美味しいもの食べたいね」「そうね、カルビが食べたい」「カルビ、僕はホットドッグがいいな」「ハハ、行こいこ」「うん、行こう」

「ちょっと、なにやってんだよ、そこは寝るとこじゃないぞ」「クゥ~」「ニャン太郎、ニャン太郎ってば、起きなさいよ」「プ~」「おい、起きろってば、顔を洗うんだよ」「ス~」「この野郎、ここは寝場所じゃないぞ。自分の居場所に戻れったら、おい」「・・・」「おい、お~~~~い」「フ~」「起きないと水出しちゃうぞ、いいのか」「・・・」「ちきしょう、しょうもない奴だまったく」

「おい、ミー子。起きろ。ミ-子ったら、起きろってば」「眠たいよ」「バカ、起きて見て視ろよ。お前にそっくりな雲が出ているから」「公文学問」「なに言ってるんだ、ほら見て視ろよ、お前が天に上ったかと思ったよ」「蜘蛛なんて嫌いだ」「何だって、寝ぼけとんのか、アホ。いいから見ろってば」「これは写真に撮る価値があるぞ。ちぇ、ならいいよ、後で見せてやるから。ジュディが帰ってきたら、今のお前の寝姿と両方見せてやろう、驚くぞ」

「急げ、あいつらに食べられちゃうぞ」「あいつらって誰!」「権太と弥助だ」「権太と弥助か、あの野郎」「あいつらは油断も隙もあったもんじゃない」「ちきしょう、権太の奴」「今日のエサは何かな」「肉だよ肉、朝、おかみさんが言ってたからな」「ええ、肉、俄然急げ」「もし食べられていたらあの野郎、ただじゃおかないからな」「少し遊び過ぎたな」「そうだな、うっかりしてたよ。しかし、急げばまだ間に合う」「よし、絶対ものにしてやる」「そうだ、必ずな」「全力疾走だ」「ゴー」