愛に恋

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父のご加護を信じる、十二指腸癌手術

まあ何と申しましょうか、ここ8年間、心筋梗塞の薬を飲み続け、昨日が月に一度の診察日。

私の主治医は女医さんで何年もお世話になっている。

先月は悪性リンパ腫に罹ったと伝え、昨日はまた十二指腸癌で21日手術と伝えるに「もう、何がどうなっているのか分からない。病気のデパートじゃない」と、お嘆きになった。

思えば、ことの始まりは15年前、酷い回転性の眩暈で3度倒れたことに端を発する。

以来、逆流性食道炎、ピロリ菌。

そして少し落ち着いた頃に襲われた心筋梗塞

これはやった者でないと、あの恐ろしさは分からない。

まるで、悪魔に魅入られたように毎夜襲って来る狭心症

心臓が破裂しそうな痛みが丑三つ時に遣って来る。

そして不整脈

ここが三途の川を渡るかどうかの分かれ道。

それに耐えに耐えたはいいが、病はこれで終わらなかった。

血液サラサラ薬を飲み始めたことをきっかけに現れたS状結腸癌。

大量血便の始まりですね。

6時間にも及ぶ大手術で、覚醒後の痛みに悶絶をうって喘ぐ私。

これで病も終わりかと思っていたが、数年前、坐骨神経痛で二か月ほど歩行困難になってしまった。

その後、さずがに定期健診を怠らなかったが、まさか血液を侵されるとは夢にも思わなんだ。

更に間髪を入れず十二指腸癌と来たもんだ。

癌は一つでさえ大変なのに二正面作戦で攻撃を受けている。

抗がん剤治療は回を重ねるごとに大変だと言われ、改めて、今回の十二指腸癌手術が、そんな生易しいものではなく、十二指腸の皮は非常に薄く少しでも穴を開けたら開腹手術になり、この場合は大手術で生命の危険も伴うと。

然し、私はもう何を言われても平気。

毎度、聞かれる、

「誰か肉親は?」「居ません。誰も居ません。両親も兄弟も居ないので全て私に伝えて下さい」

いつも一人で立ち向かって来たし、今回もまた是非に及ばず。

そう、私は必ず生きて帰るつもりなので、何を言われても平気なのだ。

だから先生にも約束して来た。

「先生、僕はまた4週間後に必ず来るからね。きっと来るからね」

先生は、

「術後、絶食があるかも知れない、5キロ、10キロ痩せてもいいから、元気が無くてもいいから戻って来て」

と、泣くんじゃないかなと思う程、いつになく湿った雰囲気だった。

「ねえ先生、こんな患者、他に居る」

と訊くに「居ない」と言うに及んで、私がゲラゲラ笑い出すのを見て看護婦は怪訝な表情。

野菜を食べろ、魚を食べろ、ラーメンの汁は全部飲むな、納豆は体にいいから。

だがどうだ、日本人の二人に一人が癌になるのだ。

つまり計算上は夫婦のどちらかが癌になるということだ。

まあ、長々と書いたが私は必ずガガーリン中佐のように帰還する。

約束する。

どんない苦痛を伴い辛くても私はまだ生きる。

私の悪運の強さは証明積みで、父のご加護も信じている。

何と言ってもやり残したことをこのまま放置して黄泉の国へ旅立つ予定はない。

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抗がん剤治療