まるで原稿用紙1000枚ほどの作文を読まされたような気分だ。
親子の私小説だが、文体としてはあまり上手いとは思えなかった。
書かれた時期は昭和28年からの3年半。
獅子文六は大衆小説家として知られているが、真珠湾攻撃で特殊潜航艇に乗って戦死した九軍神をを扱った『海軍』という作品も残している。
以来、文名は上がり昭和44年11月には文化勲章を受章、その翌月脳溢血で急死し。
家系なのか、本編中に実母と姉が同じ脳溢血で死亡したある。
知らなかったが、獅子文六という変わった筆名の由来は掛け算の四四十六のもじり、或は文豪よりランク上位の文六というのが由来らしい。
文六は結婚歴が三回、娘とは初婚のフランス人女性との間に出来た子で本作の主役。
だが、このフランス人女性は日本の水に合わず早世。
作中、登場する後妻も死別という不運に見舞われている。
帯には「自伝的傑作」という触れ込みもあるが、失礼ながら、それはちょっと褒め過ぎのような気もする。
ともあれ長い小説で殆ど衝動買いのように購読してしまった。
因みに『娘と私』は知らなかったが、文六作品の『てんやわんや』のタイトルは子供心に何か記憶している。
いずれにしても軽妙なタッチが売りの作家で、この機会に殆ど忘れられている獅子文六を知る一助になる作品だと思う。
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