書店の詩歌コーナーに行くと必ずこの人の詩集が置いてあるが読んだことがない。
中でも晩年の作『倚りかからず』という詩集は異例の10万部を売り上げたとか。
若い頃の写真を見るに知的で端正な顔立ちから育ちの良さが伺われる。
彼女は詩について、このように分析している。
「言葉が離陸の瞬間を持っていないものは、詩とはいえません」
なかなか手厳しい。
「旧い友人が新たに大臣なったといふ知らせを読みながら」
私は牢の中で
便器に腰かけて
麦飯を食ふ。
別にひとを羨むでもなく
また自分をかなしむでもなしに。
勿論こゝからは
一日も早く出たいが、
しかし私の生涯は
外にゐる旧友の誰のとも
取り替へたいとは思はない。
詩は文芸の領域で最上位に位置するものとあるが、如何に難しい分野か痛感する。
それにしても後藤正治という人は上手い書き手で、ほとほと感心した。
美しい言葉はたとえどんな鋭い批評を込めていてもなお人を癒す側面をもつ
と書いているが言い得て妙。
少し本腰を入れて詩を勉強してみようかと思わせる一冊だった。
茨木のり子が残した言葉で印象に残ったものは!
「寂寥だけが道づれ」の日々が自由ということだった。
なんだか思い当たる節がある。
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