愛に恋

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福田村事件 -関東大震災・知られざる悲劇  辻野弥生

大正12年9月1日というから、私の父は満6歳だったが、震災当日どこにいたか知らないが、ただ、大きな地震の時は机の下に隠れろとは何度か聞いていた。併し、朝鮮人虐殺に関しては一度も聞いたことがない。それらの事件に関しては10代の後半ぐらいに何らかの書籍で知ってはいたが、本格的に知るようになったのは大杉栄甘粕正彦伊藤野枝関連の本を集中的に読むようになってからだ。流言飛語なる難しい単語も同時に知った。朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ。あり得るようなデマが飛び交い虐殺に繋がる。町内の人たちは家にある武器なら日本刀は元より何でも持って自警団を作る。それを警察も放置していた。日本人に限らず人間はデマに弱い。インターネットが普及した現在では、大災害や戦争でも起きればどんなデマが飛び交うか分かったもんじゃない。そして何より怖い集団化。リンチ、虐殺と繋がっていく。四国は高松の売薬行商人たちは標準語が話せないばかりに、訊かれたことに対し讃岐弁でしか答えられなかった。全国でこのようなことは至るところで起きていた。朝鮮人と間違われ殺されただけではない。本来なんの罪もなかった朝鮮人も多く殺された。デマを信じる土壌などいつの時代でも拡散しているのだ。朝鮮人を人間扱いしてこなかった差別、戦争や虐殺を忘却してしまう怖さ。福田村事件の被疑者は地名は大正天皇崩御で、第二審から二年五か月後、全員恩赦で無罪放免。割に合わない無駄死にだった。何があろうとこのような事件は二度とあったはならない教訓だ。