愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

じんかん 今村翔吾

戦国時代の梟雄といえば、まずこの松永弾正久秀が思い浮かぶ。併し巷で松永弾正久秀を知っているかと問えばどうだろうか、10人に一人知っているだろうか。戦国武将の知名度でいえばCクラスというところではなかろうか。故にこれまで、松永久秀として1冊の本で取り上げられたものを見たことがない。それだけに本書の出現は私にとって遅きに失した。久秀は、天下取りの争いに加わったわけでもないが、三悪事=「主家乗っ取り」「将軍弑逆」「大仏殿焼き討ち」の主としてはよく知られている。本書を手に取る前はとうぜん、戦国武将たる松永弾正久秀から始まると思っていたが、ある日、天守で休んでいる信長の下に家臣が、久秀謀反の報が入り、そこから信長が知りうる久秀の過去、夜盗の少年団の一味だった生い立ちから現在までを話て聞かせるという設定になっている。殺人、追剥ぎから戦に明け暮れる日々。しかし何度読んでも解からないのが信長登場前の京での動乱。足利幕府と三好三人衆の入れ代わり立ち代わりの目まぐるしい政権交代。そして勝ち目がないと分かっていながらの久秀の謀反、いったい彼の生涯とは何だったのか。