愛に恋

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滝田ゆう名作劇場 滝田 ゆう

私は成人してから『あしたのジョー』の最終回、ホセ・メンドーサとのタイトルマッチを描いたものと、当時流行っていた上村一夫の『同棲時代』を読んで以来、スパッとマンガを読むのを止めてしまったが、唯一、たまに読むのが滝田ゆうの劇場シリーズぐらいだ。この人の何が好きかというと、戦前・戦中の玉ノ井などを描いた郷愁溢れる情けない風貌の登場人物に惹かれてしまうのだ。そのぼよぼよ、なよなよとした画風がなんとも堪らない。本作は安岡章太郎丸谷才一木山捷平井上ひさし吉行淳之介など22人の文士が書いた小編を元に劇画したものだが、特段、内容が面白いというわけではないが、見つければどうしても買ってしまう。滝田ゆうさんはもう34年前に亡くなっているが、戦災で玉ノ井などが失われてしまったことを下町などを惜しみ、そのような街並みを思い出しつつ書く心が痛い。