愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

ヘチマくん 遠藤周作

遠い昔の私がまだ10代のころ、というから数十年前のことになるが、当時、名古屋市の中心地栄町に住んでいた。地下街まで徒歩5分という手ごろさで、暇を見つけては地下街の本屋に出かけていき、次に何を買うか物色するのが私の日課だった。三冊買っては読み終わると次の三冊を買うというのが鉄則。その三冊というのが純文学、大衆小説、そしてミステリーとなる。例えば川端康成遠藤周作五木寛之、そして松本清張などである。そして今回、古書店で『ヘチマ君』を読んだか否か分からないまま買ってみたが、読んでない本と分かり安堵しているところだ。“ヘチマ”くんとは、豊太閤の末孫豊臣鮒吉のアダ名で、容貌風采ヘチマの如くモッサリとして世知に疎く、底抜けに善良で人を疑ぐることを知らぬ青年。豊臣家の末裔秀吉の子、秀頼が鹿児島に落ちのびたという伝説は確かに何かで聞いたことがあるし、ご当地にはその証拠たるものもあるとテレビで観たこともある。それらのことを知ってか遠藤氏は、友人に担がれヘチマ君を秀頼の子孫だといい、鹿児島のある部落に出向き、将来高値となる土地を買おうと計るが、さてさて、どうなるかは読んでのお楽しみ。