愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

「ムーンライト・セレナーデ」 青木繁が姉妹に書いた最後の手紙

青木繁が姉妹に書いた最後の手紙は実に哀しい。「小生が苦しみ拔きたる二十數年の生涯も技能も光輝なく水の泡と消え候も、是不幸なる小生が宿生の爲劫にてや候べき。されば是等の事に就て最早言ふべき事も候はず。唯殘るは死骸にて、是は御身達にて引取くれずば致方なく、小生は死に逝く身故跡の事は知らず候故よろしく頼み上候。火葬料位は必ず枕の下に入れて置候二付、夫れにて當地にて焼き殘りたる骨灰は序の節高良山の奥のケシケシ山の松樹の根に埋めて被下度、小生は彼の山のさみしき頂きよ思出多き筑紫平野を眺めて、此世の怨念と憤懣と呪詛とを捨てゝ靜かに平安なる眠りに就く可く候。是のみは因緣ありて生まれたるそなた達の不遇とあきらめ此不運なりし繁が一生に對する同情として、是非ゝゝ取計らひ被下候様幾重にも御願申上候」青木繁28歳の生涯だった。おやすみなさい、また明日。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。おやすみなさい、また明日。