愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 形影相伴う

戦前の話だが、大蔵省に池田勇人前尾繁三郎という男がいた。前尾は池田の4年後輩。池田は前尾に「君は主税局長になれ、僕は国税課長をやるから」と言って、池田は玉造税務署長をやり、前尾が和歌山税務署長となった。池田と前尾がこれほど親しくなったのは不思議だ、と友人の多くが思うほど二人のタイプは異なっていた。共通点は、二人とも酒が好きなことと、大蔵省において三等の赤切符組だったということである。しかし、なにより、知り合ったのが、共に大病をして大蔵省に復職した直後だったということが大きかったと思われる。以後、彼らはまさに「形影相伴う」という言葉通りの人生を歩んだ。二人は、東京に戻ると、共に世田谷松原に居を構え、頻繁に往来するようになる。二軒の間は100mと離れていなかった。昭和23年には大蔵省を辞し、それぞれの地元から総選挙に打って出て、共に当選する。やがて、池田の周囲に池田派というような議員集団ができてくると、前尾はその「代貸し」のような役割を引き受けることになる。さらに、池田が自民党の総裁となり、池田内閣が成立すると、翌年から自民党の幹事長として党内を仕切ることになる。これ即ち今日の宏池会たる所以なり。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。おやすみなさい、また明日。