愛に恋

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ダメオのアニマル・ラブ Part.21

こおの~、ハロウィンがなんだ、カボチャなんかこうしてくれる。

ああ、自由だ。鳥居を抜けたら自由だとお婆ちゃんが言ってたとおりだ。今日から自由なんだ。これから狭い家の中と違って好きなところに行けるぞ。伸びのびと暮らそう。自由を満喫するぞ。ヤッホ~。

「俺たちの縄張りに隣村の与太郎一家の奴らが忍び込んだって、誰から訊いたんだ」「へい、三毛オバサンが言っておりました」

「そうか、あの婆さんが言っていたなら間違いねえな。おう、野郎ども、ぬかるんじゃねえぞ」

「お~う」

「おお、これは良く見える。最近、息子や嫁の顔も歪んでわからようなったから、これは助かる。孫の顔も見分けがつかんようじゃったら怒られるけんの。よかよか、これなら安心たい」

「今日は私の配下の者を全員集めてみた。おう、今日は天気もいいしのんびり散歩にでも行くぞ」「へい、分かりやした」「見知らぬ外様の猫を見つけたら、とっ捕まえろ」「へい」「序に打ち上げられた干上がった魚を見つけたら持ってこい」「へい」「今日は煩せえカモメもいないな」「そうですね、ホントにのびのび出来ます」「おい、与太郎。お前のとこは子供が生まれたのか」「へえ、お陰様で母子ともに元気です」「おいみんな、今日は与太郎のためにも魚を沢山獲ってやれ」「分かりやした。与太郎、任せとけ。沢山獲ってやるからな」「わるいな」

モコモコモコ「押すなおすな」「寒い、さむさむさむ」「引っ付け、ひっつけ、ひっつけ」「ぎゅうぎゅうだ、ぎゅうぎゅうだ」「暑くなってきた、少し離れろ」「少し多すぎるな」「仕方ないだろ家族なんだから」「そうだ家族だ」「ママはどこだ、パパがいないぞ」

「早く乗れ」「うん、なかなか難しい」「滑っちゃうよ」「何やってんだノラ公」「早く上がれ、力尽きちゃう」「お~い、お前たちもそんなところで休んでないでこっち来い」「俺はいいよ、疲れそうだから」「だらしない奴らだ」「いつまでぶら下がってるんだよ、早く上ってくれよ」「これは難しい」「然し、上ったら何があるんだ」「つべこべ言わないで上ればいいんだよ」「何もなにのに上るのか」「見晴らしだよ見晴らし」「見晴らし、それがなんだ」「いいから、つべこべ言うな」「全員乗るのか」「決まってるだろうか」「お~い、お前らも来い」

「本当に俺みたいな男でいいのかい」「もちろんよ、アナタ以外には考えられないわ」「この辺りじゃ、スケこましのケンって言われてるんだぜ。すれでもいいのかい」「だからこそアナタを選んだのよ。モテる男を独占してこそ女冥利に尽きるってものよ」「そうかい、アンタがそこまで言うなら俺も納得だよ」「これからはいつも一緒よね」「二人して肩で風を切って歩こうぜ」「みんなを見返してやりたいわ」「いいぞ、それでこそ俺の女だ」「うふ」

「おい、来たぞ。奴らが」「どうしよ、えらいことになったぞ、これは」「早速、親分に告げなくちゃ」「然し、親分は今、彼女と」「そんなこと言っている場合か。権蔵一家が殴り込みに来たんだぞ」「俺たちの島を荒らしに来たんだ」「バカ言え、荒らしに来たならまだマシだ。そっくり俺たちの島を横取りしようという魂胆だ」「そうなったら大変だぞ。俺たちは路頭に迷うこといになっちまう」「何匹来たんだ」「1、2、3、4・・・18匹だ」「18匹、俺たち一家は13匹だぞ」「清水親分に応援を頼んだ方がいいぞ」「よし、引っ返して報告だ」

え~と、確かこの辺のはずなんだがな。田原町一丁目12-5、おかしいな、それらしい家はないけど。ほんとうに当ってるのこの番地で。左は海辺で右が畑、しばらく家はないよ。どうしよ、引っ返してもう一度、確かめてみようか。名前はと、「魚屋太郎兵衛」、そんな看板ないな。やっぱり引っ返そ。