愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

本当は怖い昭和30年代 キン マサタカ

写真家、土門拳などの作品を見ていると昭和30年代は如何にも長閑で古き良き時代を切り取ったノスタルジックに満ちたとてもいい時代のように思える。 高度成長期の日本はまだまだ貧しく伸び盛りで、町には子供が溢れ、人情があり、もう再び帰ってくることの…

あい 永遠に在り 高田郁

司馬遼太郎作品に『胡蝶の夢』という奥御医師・松本良順を描いた作品がある。 確か単行本で全5巻だったと思うが、登場人物の一人に関 寛斎なる蘭方医がいた。 がしかし、読後、何十年も経っているので内容は殆ど忘れてしまい、関 寛斎のことはすっかり失念い…

キスカ島 奇跡の撤退―木村昌福中将の生涯 将口泰浩

大戦中、良くも悪くも国内外に名を轟かした帝国陸海軍人は多い。 中でも私の嫌いな軍人と言えば辻 政信参謀と牟田口廉也中将。 牟田口中将はインパール作戦の失敗を受けて当然、割腹すべきであったと思うが戦後も生きながらえた。 辻参謀はどういうわけか戦…

乱れ雲 伝・佐藤紅緑 監修 城市郎

一体、自分は何の為にこんな本を読んでいるのかと思うことが多々ある。 専門外、畑違い、理解不能、いくら背伸びをしたところで解らないものは分からないといった本。 近くの商店街にリサイクルショップがある。 主に衣類専門だが、どういうわけか棚に二段だ…

ロッパ随筆 苦笑風呂 古川緑波

ロッパの随筆を読むのは『ロッパの悲食記』に続いて2冊目だが、この人は本当に美食家だったんですね。 前回に比べて、それほど食の話しは出てこないが、それでも飯のネタは尽きない。 それをエネルギーにかどうかは知らないが、脚本家でもあり読書家だったロ…

乙女の港 川端康成

20歳前後だったと思うが、ひたすら川端康成ばかりを読んでいた時期があった。 しかし、22歳で司馬遼太郎を知ってからというもの、まるでバトンタッチしたかのように川端文学から遠のいてしまった。 以来、もう川端を読むことはあるまいと思っていたら、今ま…

ジャン・ギャバンと呼ばれた男 鈴木明

凡そ30年程前のこと、それまで務めていた会社を辞め、急に無職になってしまった私は取り立ててこれといってやることもなく、さりとて直ぐ職探しに奔走する気にもなれず暫くブラブラしていたが、ある本を買ったことから急にアグレッシブに行動するようになっ…

エディット・ピアフという生き方 山口路子

何の問題も起こさず真面目に生き抜くということはいい事だと思うが、反面、ゴシップとスキャンダルに彩られたこのような人たちをどう見ればよい。 ビリー・ホリディ、ジュディー・ガーランド、エラ・フィッツジェラルド、マリリン・モンロー、ビビアン・リー…

対馬丸 大城立裕

学童疎開船は非軍事の観点から戦闘行為には参加せず『戦時国際法』からいっても攻撃対象にはならないはずだった。 にも関わらず昭和19年8月22日22時23分、悪石島近海で敵潜水艦から3発の魚雷攻撃を受け海の藻屑となったが、この事件は国際法違反に問われるこ…

黄昏のビギンの物語 佐藤剛

今でこそ全くカラオケに行かなくなったが以前は『君こそわが命』と『宗右衛門町ブルース』を十八番にしていた時期があった。 本来はサザンを歌いたいのだが声質が合わず、どうも演歌調の歌が得意で、何かと言えばよく歌い、またよくリクエストされたものだ…

圓太郎馬車―正岡容寄席小説集

山本有三原作で昭和13年制作の『路傍の石』を観ると珍しく鉄道馬車の動画が見れるが圓太郎馬車とは何ぞや・・・? 鉄道馬車はレール上の客車を馬が引っ張るのだが圓太郎馬車は道路上の客車を馬に引かせるものらしい。 明治から大正にかけて圓太郎馬車、つま…

快楽 更年期からの性を生きる 工藤美代子

工藤美代子という作家の名前はよく目にするが、主に歴史ノンフィクションや評伝ばかり書いている人だと思っていたら、豈図らんや、こんな主題の本まで書く女性だったとは意外や意外。 快楽と書いて「けらく」と読ませているが要はタイトル通りの内容。 閉経…

そうか、もう君はいないのか 城山三郎

昭和51年、『落日燃ゆ』という終戦ドラマを見た。 文官中、ただひとり絞首刑となった元首相広田弘毅の生涯を描いた物語で、原作は吉川英治文学賞を受賞した名作。 広田役を演じたのは名優滝沢修で素晴らしい作品だった。 それが城山作品に触れた初めての出会…

清須会議 三谷幸喜

三谷幸喜の作品は初めて読んだ。 別に三谷幸喜だからというのではなく、このタイトルに惹かれた。 『清州会議』 本能寺後の歴史書には必ずと言っていいほど登場する有名な会議だが、これまで『清州会議』だけを扱った本というのは見たことがない。 勿論、書…

或る男の断面 宇野千代

『或る男の断面』の或る男とは東郷青児のことで、宇野千代の代表作『色ざんげ』は東郷に書いてみないかと持ち掛けられた東郷自身の心中未遂から宇野との結婚についての話しを仮名を使って語られているが、こちらは全て本名で書かれている。 といってもエッセ…

定年オヤジ改造計画 垣谷美雨

唐突だが、夫源病という言葉を聞いたことがあるだろうか? 一般的にあまり聞かない単語たが調べてみると確かにある! 読んで字の如しというか、夫が原因の病気らしい。 定年後の夫を粗大ごみと呼び、熟年離婚が叫ばれて久しいが夫源病なる単語に興味を持ち、…

犬が星見た―ロシア旅行 武田百合子

昭和44年に約1ヶ月かけて旧ソ連領を旅した時の紀行文、或は日記といってもいいが、1日の出来事を平均して12ページぐらいは書いている。 どこを読んでも「ホテルへ帰り、日記を書く」というくだりはないが、見聞したこと使った料金などを実に細かく記載して…

クラシックホテルが語る昭和史 山口由美

戦争で都市を爆撃する場合、代表する高級はテルは好き好んで爆撃しないという説があるそうだが本当だろうか。 そもそも空襲がなかった奈良ホテルや箱根の富士屋ホテル、軽井沢の万平ホテルはともかく横浜のニューグランドホテルが戦災に遭わなかったのは不思…

731 石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く 青木冨貴子

731部隊の人体実験に関する詳細は以前何かの本で読んだが、本書は人体実験を主題にしているのではなく著者が探し出した石井中将自筆ノートの解明を主題にしている。 千葉県の大地主だった石井家の繁栄と戦後の凋落、GHQとの取引で石井を含め731部隊関係者全…

大正美人伝―林きむ子の生涯 森まゆみ

林きむ子とは所謂、大正三美人の一人で林姓は再婚相手の名前。 九条武子、柳原白蓮と並んで世情を賑わした美貌の持ち主だというが、なるほど、写真を見ると品性と知性にも恵まれていた才媛なのだろうか。 義大夫語りの娘で、新橋料亭「浜の家」の養女となり…

へうげもの 古田織部伝―数寄の天下を獲った武将 桑田忠親

井上靖、晩年の作に『本覚坊遺文』という傑作がある。 あくまでもフィクションだが利休の弟子だった本覚坊が遺した文章を通して利休居士の死の謎に迫るという話しで87年に映画化されヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞している。 主演は奥田英二だが三…

父・丹羽文雄 介護の日々 本田桂子

著者は丹羽文雄の長女で、ブログを書くにあたって少しこの親子に付いて調べてみたが私の記憶に間違いはなかった。 丹羽文雄は三重県四日市に1904年(明治37年)11月22日に生まれ2005年(平成17年)4月20日に没している。 つまり満百歳の天寿を全うし文壇の生…

女優万里子 佐藤愛子

現在、存命の作家で祖父が武士だったという人はおそらく佐藤愛子を於いて他にいないと思うがどうだろう。 祖父、弥六は何と阿片戦争が終結した1842年(天保13年)弘前生まれで沖田総司、大山巌と同年齢だとか。 福沢諭吉の門下生で幼児の頃から秀才の誉れ高…

ためいきのとき 若き夫ジェラール・フィリップの死 アンヌ フィリップ

名優ジェラール・フィリップと言っても『モンパルナスの灯』しか観ていないが、何かガラス細工のような繊細な演技で妙に印象に残る男優だった。 没年は59年の11月25日。 僅か36年の生涯で奇しくもモディリアーニと同じ歳で亡くなっている。 本書は未亡人とな…

読書の腕前 岡崎武志

世の中には恐ろしい読書家、乱読家がいるが、私などはとても「読書の腕前」などと言う大それた文章を書ける腕前などは持ち合わせていない。 それでもタイトルに惹かれ読んでしまったが、好みのジャンルも相当違うようで年間3000冊の本が増殖中と聞いて絶句。…

逆光の智恵子抄―愛の伝説に封印された発狂の真実 黒沢 亜里子

著者の黒澤亜里子という人は1952年生まれ。 肩書きには沖縄国際大学文学部教授とある。 巻末の後書きに1985年とあるので女史、33歳の作品ということになるが、いやはや、大学教授というものは斯くも難しい文章を書くものかと呆れてしまう。 古本屋で見つけた…

サー・リチャード・スターキー

去年の12月29日、イギリス政府は叙勲名簿を発表し、リンゴ・スターがナイトの爵位を受けるというニュースを見たが、ポールに遅れること20年、「さあ、リンゴ」、いやいや、サー・リンゴの誕生と聞いてジョンとジュージが仮に存命なら、或は全員がナイトの称…

父・萩原朔太郎 萩原葉子

室生犀星が言うように萩原朔太郎は不世出の天才詩人だろう。 私個人も詩人の中では断トツに朔太郎ファンだが、しかし、娘葉子の目を通して見ると、いや家族の目には実に異彩というか変人のように映っていたのかも知れない。 何しろ癖の多い人だった。 出かけ…

ツイン21古本フェア

本日の気温22℃、やや風あるも絶好のお花見日和。 車窓より見ゆる花見の光景、まったく長閑なりし。 しかし、我の目的は花見に非ず。 春といえば古書市、古書市いえば腰痛ですね(笑 戦利品は2冊でした。 裁判記録「三島由紀夫事件」 今迄、裁判記録はいろい…

死んでいない者 滝口悠生

毎度のことながらどうも芥川賞受賞作とは相性が合わない。 古くは尾崎一雄の『暢気眼鏡』、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』、または村上龍『限りなく透明に近いブルー』、池田満寿夫『エーゲ海に捧ぐ』等々。 ただ、松本清張の『或る「小倉日記」伝』はい…