愛に恋

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キスカ島 奇跡の撤退―木村昌福中将の生涯 将口泰浩

 
大戦中、良くも悪くも国内外に名を轟かした帝国陸海軍人は多い。
中でも私の嫌いな軍人と言えば辻 政信参謀と牟田口廉也中将。
牟田口中将はインパール作戦の失敗を受けて当然、割腹すべきであったと思うが戦後も生きながらえた。
辻参謀はどういうわけか戦後になって行方不明のままだ。
 
本書が採り上げられているのは木村昌福海軍中将で、昌福と書いて「まさとみ」と読む。
全く知られていない提督だが輝かしい戦歴がある。
 
歴史上、アッツ島玉砕、キスカ島撤退というが、私はその詳細を知らなかった。
距離的には両島は300㌔近く離れ、位置的にはアッツ島の方が日本寄り。
大戦中、唯一アメリカ領に日章旗を立てた島として有名だが、当然、アメリカ軍はこのアリューシャン列島の小さな島の奪還にかかった。
 
予想では先にアメリカ本土に近いキスカ島に上陸すると思っていた日本軍だったが意に反して米軍が攻略にかかったのはアッツ島で、ほどなく日本軍は玉砕。
当然のことながら次はキスカ島上陸となる。
その前に先手を打って5,183名の全将兵撤退を成功させたのが、「髭の昌福(しょうふく)」と言われ当時少将も木村昌福
 
そんなこととは露知らず何万発もの砲弾を撃ち込み35,000名の将兵無人島に上陸させ、同士撃ちで死者95名、負傷者78名、捕虜は雑種犬3匹のみ。
アメリカ軍をして「パーフェクト・ゲーム」と言わしめ『太平洋戦争アメリカ海軍作戦史』にはこう書かれた。
 
「史上最大の最も実践的な上陸演習だった」
 
そもそもキスカ島は無血占領だったが今度は無血撤退。
玉砕ばかりが叫ばれる中、撤退も勇気ある決断だと思う。
それにしてもアメリカ軍包囲網の中、絶妙なタイミングでの撤収。
指揮官の見事な決断には脱帽する。
 

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