愛に恋

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731 石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く 青木冨貴子

 
731部隊の人体実験に関する詳細は以前何かの本で読んだが、本書は人体実験を主題にしているのではなく著者が探し出した石井中将自筆ノートの解明を主題にしている。
千葉県の大地主だった石井家の繁栄と戦後の凋落、GHQとの取引で石井を含め731部隊関係者全員の戦犯免訴など。
 
著者は女性だが恐ろしいまでの執念で部隊関係者の戦中戦後、またどの程度の資料がアメリカ側に渡ったのかを追跡している。
米ソが必要以上に石井が持つ資料を欲したのも将来起こり得る細菌戦による備えということらしい。
 
しかしアメリカに渡った『19人の医者による人体実験リポート』
8000枚の病理標本は現在行方不明で、この本には生々しい生体実験の様子などは出て来ないが、実際、どれだけおぞましい実験が為されたかと思うと見も毛もよだつ。
戦時に於ける人間の残虐性、家族思いの普通の人が、悪魔の所業に手を貸してしまう恐ろしさ。
隊員の多くは戦後日本の医療関係の礎を築いた人々。
 
石井中将は隊を解散するにあたって、ここで行われたことは墓場まで持っていくよう他言してはならぬと鬼の形相で言ったらしいが、結局その約束は守られなかった。
普通のお父さんが戦時には悪魔と取引きが出来る、非人間的なリアリズムこそが人間の内面に隠されているのかと思うとやはり人間こそは一番怖い。
731部隊が行ったことは人間の良識として徹底的に暴かなければならない。
 
因みに石井軍医中将は戦後極めて早い時期に帰還している。
全ての資料は焼却するという命令を無視して多くの資料を持ち帰った。
少なくともソ連側に逮捕されるよりはましであったか。
 

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