愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 萩原先生と言え

室生犀星萩原朔太郎は親友でありながら、酒の席となると直ぐ喧嘩となり帰ったらしい。ある晩、二人して入った酒場に見た顔があり、それは小林秀雄だった。犀星にとっては初対面と変わりない間柄だったが朔太郎とは旧知の仲らしく、小林は大分出来上がっていたのか、朔太郎とすぐ文学上の議論めいたものが持ち上がり、段々に声が大きくなっていく。険しい言葉の切れが耳をかすめ、話の具合で小林が朔太郎を「萩原」と呼び捨てにしたことを、朔太郎は掴んで離さない。「萩原とはなんだ。呼び捨てにするとは何だ」「では、どう言ったらいいんだ」「萩原先生と言え」「へ、萩原先生とかい。」二人の論戦は続き犀星は冷や汗を掻いて、萩原、帰ろうと彼をなだめ、小林には萩原は今日は酔っているからと言って表に出た。他人には大人しい朔太郎のあんな姿を始めて見たと犀星は書いている。これに似た場面も犀星は書いているが、相手は小林ではなく芥川だった。そんな場面に遭遇してみたかった。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。カフェ友の81歳になるおじいさんが、今日は寒いからと朝方、冬布団を出してもらったとか。私はまだ毛布一枚でクーラーをかけて寝ているというのに。おやすみなさい、また明日。