所謂、「まくら」というものは、本題に入る前の導入部に、本題と関わりのある話をして、知らぬ間に、きわめて自然に、本題に入っていくところに妙味があるものだが、それには幅広い知識が必要になろう。
時には和歌、川柳、俳句なども必要になる。
そこへいくと、この三遊亭円生という人は読書好きで博覧強記といえよう。
例えば、東風吹ば匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れぞ、とさらりと和歌が出て来る。
私がいなくてもお前はやはり、今まで通りに花を咲かし、人の目を喜ばしてやっておくれ、という意味だが、一般的に、和歌、川柳、俳句などは余程のものでない限り一読して直ぐ覚えられるものでもない。
誰でもそうかも知れないが、なぜか子供の頃の記憶力は抜群で、今ではさっぱりなのに、小学生の頃に倣った百人一首の冒頭二つだけは覚えている。
私などは圓生のような記憶力と知識には到底及ばないが。