愛に恋

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奇跡の人 奇跡の人 原田 マハ

こんな安易なタイトルの本を何故買っただろうと思いつつ読み始めた。

途中まで読んであることに気が付いた。

もう何十年も前の映画だが、アーサー・ペン監督によるアメリカの伝記映画でヘレン・ケラーの三重苦を描いた作品があった。

主演女優賞にアン・バンクロフト助演女優賞パティ・デュークだが、アン・バンクロフトは『卒業』でお馴染みの女優。

その作品名が『奇跡の人』なのだ。

本書に登場する三重苦の少女名は介良(けら)れん、家庭教師が去場安(さりばあん)。

主人公の去場安は9歳の時、岩倉使節団の一員としてアメリカに渡り高等教育を受けたとあるので、はて、そんなけったいな名前の少女がいたかなと訝しい気持ちで読んでいたが、何のことはない。去場安とはアン・サリヴァン先生のことで、介良れんはヘレン・ケラーをもじったものだった。

明治の昔、盲目の人は按摩か瞽女しか仕事がなかったと思うが、ある青森の男爵家庭で、押し込め部屋のような中に閉じ込められていた6歳の少女を助けてやってくれないかという、伊藤博文の手紙がきっかけで介良れんは男爵邸に行くのだが、まあ読んでいてイライラ、ドキドキ、ハラハラの連続、思い入れが深くなるほど本にのめり込んだ。勿論これはヘレン・ケラーとは何の関係もないフィクションだが、思っていた以上に面白かった。