この本は詩画集として萩原朔太郎の詩に司さんの幻想的な挿絵でなり立っているが、朔太郎の詩をイメージして書かれた絵というわけではなさそうだ。
私個人は朔太郎ファンだが、こうして詩画集を出すぐらいだから司氏も朔太郎のファンなのだろう。
しかしこの文庫本、勉誠出版なる会社から出ているが聞いたことがない出版社だ。
おまけページというものがない不思議な本。
絵画には疎いほうなので朔太郎の詩を少し紹介したい。
「広瀬川」
広瀬川白く流れたり
時さればみな幻想は消えゆかん
われの生涯を釣らんとして
過去の日、川辺に糸をたれしが
ああかの幸福は遠きにすぎさり
ちひさき魚は眼にもとまらず
「公園の椅子」より
われは指にするどく研げるナイフをもち
葉桜のころ
さびしき椅子に「復讐」の文字を刻みたり
朔太郎は漂泊の詩人である。
故にいつも孤独を歌っている、否、刻んでいる。
司修氏も敢えてこれらの詩を掲載しているところを見ると孤独の本質には拘りを持っているのかも知れない。
例によって、これも古本屋で買ったが、果たしてこんな本は失礼ながら売れるのだろうかとやや疑念を持つ。
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