《ワークショップ付きの形而上学的なインテリア》(1951年)
《通りの神秘と憂愁》(1914年)
《不安を与えるミューズたち》(1916年)
《ヘクトルとアンドロマケ》(1917年)
《マンハッタンの形而上学的インテリア》(1972年)
《帰る幸福》(1915年)
《プリマヴェラ・デ・トリノ》(1914年)
《詩人の不安》
難しいことは分らぬが、この人の絵は本当に不思議だ。
確かにピカソ、ダリ、ムンクなどの絵は常人には描けぬが、彼等の絵は決して夢の中に
現れぬ構図のように思う。
が、キリコばかりは、この無機質な空間といい夢の中に現出する異次元の世界のよう
で、どことなく不気味な感じがする。
静寂が押し包んでいるようで息苦しい。
何かが出て来そうで早く逃れたい。
何処に行ったら抜け口があるのか分からない。
圧迫感があり声が聞こえてこない。
大体、どうしてこのような着想になるのか頭の構造が理解出来ない。
仮に私が絵描きだとしても、見たこともないような物は描けない。
精々、写生を得意とするのが関の山だ。
いったい、この人は何を見ているのだろうか、いや、何が見えているのだろうか。
スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』のラストは、或いはキリコにヒント
を得たのではないかと勘繰ってしまうが、素人の浅はかな考えだろうか。