獅子文六、第7弾!
その名も『青春怪談』、相変わらずのドタバタコメディで、あまりパッとしないタイトルだが、まずは目出度い。
どうもこの3人の戦後小説は似たり寄ったりのラブロマンスで、当時にあっては必ずと言っていいほど映画化され、この作品に到っては何と3回もリメイク版があるらしい。
さすがに映画好きの私も、計11作品中、一本も観たことがないが。
本作は文六先生、戦後、4作目の新聞小説で当時のエッセイにはこんなことを書いている。
180回から200回、言い換えれば、6か月とか7ヵ月とかの間、毎日、欠かさずにものを書くことは、重い労苦であり、それに堪えるものは体力以外にない。
私は、大体、2年に1度ずつ、新聞小説を書くことにしているが、次第に、それも重い負担になりつつある。
因みに昭和30年、先生は62歳。
作中人物の主人公は50歳で、既に老人扱いされているから当時の60代はもうお爺さんなのだ。
さて内容はざっとこんな感じ。
美男子で合理主義の青年、宇都宮慎一は商売で店を持つことにのめり込み、その婚約者、奥村千春はバレエの道を邁進している。二人には、早くに伴侶を亡くした親がおり、ある時、親同士をくっつけてしまおうと画策するが…。一方でつかず離れずの関係を続ける慎一と千春をうらやむ周囲の人間から、仲を引き裂こうと怪文書が届き、この二人にもドタバタ劇が訪れる!
作中、気になった文章と言えば!
・セックスを離れて、芸術はないそうだが
・うちのママが、乾いた薪であることは、知っていたが
・恋愛というものは、灼けつくとか、焦げつくとかとかいう状態に至らないと、本物
とは思えない。
・対手にすべてを献げるとか、いかなる犠牲も忍ぶとかいう感情が起こるのが、本筋
である。
さすがに分かっていらっしゃる。
まあ、一言で言うならば軽妙洒脱な文体とストーリーで、マンネリと言えば失礼な話しだが、軽く読んで忘れてしまう小説ということにもなり、今日、絶版久しいのも頷ける。
故に、将来、また再び、文六ブームが来るのはいつのことやら。
だから、今の内に読んでおくのである。
必ず、また絶版になる日も近いはず。
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