愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 下山事件

今となっては時効だから書くが、昭和12年7月7日、日中間の全面戦争の引き金になった盧溝橋事件が起きた。その翌月、上海在住だった我が父は軍に徴用され現地の特務機関で働くことになる。これは本人の証言と引き揚げ後の資料により明らかなのだが、問題はその後だ。博多に引き上げ後は横浜で生活していたらしい。物心ついたころの私は、東京の板橋に住んでいたが継母と離婚後、名古屋の上飯田に親子二人で6畳一間のぼろアパートに住むようになった。そこに何故か古い新聞が山積みになっており、見出しには「キャノン」という文字が躍っていた。キャノンとは旧岩崎邸を本部とした、GHQ傘下の参謀第2部(G2)直轄の秘密情報機関のことで、司令官はジャック・Y・キャノン陸軍少佐。今夜、NHKで『未解決事件』と題して、7時半から「下山事件」を放送して、久ぶりに硬派のテレビドラマを観た。脚本、演出、俳優など素晴らしい作品だったか、問題の下山事件は御存じのとおり自殺か他殺か判らぬ未解決のまま現在に至っている。この事件に父が拘わっているのではないかと以前から疑念があり、自分なりに調べた経緯がある。するとどうだ、今日の放送で日本の検察が掴んだ情報は、他殺説を取り、首謀者をキャノン機関所属の旧特務機関と断定しているではないか。まさしく父だ。父の名前が出やしないかと冷やひやしながらドラマを観た。さらに今夜10時から新証言として日米の人たちのインタビューなどを聞いたが、あの戦後最恐のフィクサーと言われた児玉誉士夫が出て下山事件について何らかの証言を得たが確たるものは聞けなかった。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。アメリカまで取材にいき新たな公文書など発見があったが、やはり謎は解けなかった。私としては複雑な気持ちのまま今後を迎えることになったわけだ。おやすみなさい、また明日。