愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 ヒロポン

戦時中、多くの特攻隊員がヒロポンを打っていたという話はよく聞くが、覚醒剤取締法ができたのは昭和26年で、それ以前は薬局で大っぴらに売っていたらしい。敗戦後、何がきっかけだか分からないが猛烈にヒロポンが流行り出し、当時の町場の男たちは多少なりともやっていた。ポンを打たない男を見ると、成人のくせにまだ童貞なのかと思われ、特に芸人、役者たちが多く、なにしろ軽腰で流行にすぐ飛びつくうえに、不道徳不健康というのが二大勲章のように思われ神風タレントはろくすっぽ寝ずに、ヒロポンの勢いでぶんぶん稼いで威勢がよく景気がいい。ポンを打たないものは楽屋にいても貧乏神のようで、また、仕事もないのにヒロポンだけ打って、エネルギーをもてあましている奴もいる。我が父は戦後、横浜で占領軍の仕事に従事しながら、ジャズバンドでアコーディオンを弾いていたらしい。その横浜は日本で最も質のいい「ブツ」が手に入る街で、どういう筋からなのかは分からないが、覚醒剤取締法が出来たあとも、私の目の前でよく静脈注射を打っていた。あれはヒロポンに間違いない。傷痍軍人だった父は椎間板ヘルニアに悩まされ睡眠薬も常用するようになり、ついに脳溢血で倒れ不帰の人になった。薬物乱用が命を縮めたのだ。今の私も薬物中毒だがヒロポンだけは手を出したことはない。ただ、睡眠導入剤にはお世話になっているが。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。では、おやすみなさい、また明日。