愛に恋

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いねむり先生 伊集院 静

本書を読むまで伊集院静色川武大阿佐田哲也)の繋がりというものを知らなかった。世代も違うし異色の二人の交際など想像もできない。併し、実際は伊集院が夏目雅子を亡くして2年後あたりに知人から紹介され、麻雀に誘われたころから急速に接近し、世間でいうギャンブルの達人にして無類の旅好き、博学にして物書きの色川武大に惹かれていったらしい。色川を先生と呼び、周囲が言うように誰からも好かれ魅力的な色川を、まるで師と仰ぐように各地の競輪場を回り、無職の伊集院は色川と意気投合していく。知人友人、親などから借金をしてまでギャンブルにのめり込む無頼派の伊集院を上回る無頼派ぶりに頭が上がらないようだ。2人には精神的な病気もあり、富士山など尖ったものが苦手で何処ででも突然寝てしまう色川。夏目を亡くして以来、アルコール依存症で苦しんだ伊集院。それにしても、あの風貌からは想像出来なかった色川の魅了たるもの、そこまで言うなら一度お目に掛かりたかった。会った者を忽ちに魅了させ、ヤクザにも一目置かれる、どこか掴みどころのない色川。ジャズと酒が好きで、何処に行っても飲み屋に入り大食いにして太鼓腹。頭髪は禿げあがり、やはり人は見た目では分からないものだ。最後は色川の急死から、香港での伊集院の号泣で終わっている。