愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 二人は一緒に逝ったんだから

心中した太宰治と山崎富栄には犯罪性が認められなかったので解剖はされなかった。両家族の間で火葬場について話し合われた。「二人は一緒に逝ったんだから、同じ火葬場で骨にしてやりましょう」東大仏文の先輩で、作家、翻訳家の豊島与志雄が言う。豊島はすでに刊行がはじまっていた『太宰治全集』の解説者で、太宰と富栄は、彼の家を三度おとずれ、そのうち二度は泊まっていった。太宰に誠心誠意つくす富栄、まんざらでもなさそうな、おもはゆげな微笑でこたえる生前の太宰を見ていた豊島の願いだった。当然ながら、津島家が反対した。太宰は杉並の堀ノ内へ、富栄は三鷹の北西にある田無の火葬場へ別れた。子供四人を喪うことになった富栄の父。不倫相手と心中した太宰の妻の気持ちは如何ばかりであったか。けっきょく二人は同じ墓には入れてもらえなかった。富栄の気持ちを訊きたいものだ。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。カフェに群れるオバちゃんたちは、なぜあんなに煩いのか悩める読書人ダメオです。おやすみなさい、また明日。