愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 『蘇州夜曲』

数々の名曲を作った服部良一は自作の中でも『蘇州夜曲』が一番好きだと言っている。作詞は西條八十で、昭和15年、映画『支那の夜』で長谷川一夫と共演した李香蘭が挿入歌として歌っているが、戦後、進駐軍から日本の国策映画だと槍玉に上げられた作品だ。橋本治は、この歌を「永遠の名曲」として絶賛している。日本の「いそしぎ」であり「虹の彼方に」であり「慕情」であり、名曲中の名曲「日本歌謡界の最高峰」だというのである。橋本は『蘇州夜曲』は恋の歌であり、その背後にある中国の美しさを手放しで肯定し、「一切は、桃の花咲く春の夜の寒山時の鐘の音と共に、みごとに美しく消えて行く、それだけなんです」と締め括っている。だからというわけではないが、我が父は水の都蘇州の生まれで、私自身も若い頃から蘇州夜曲こそ名曲だと思っている。詩・曲ともに芸術的にも最高峰だろう。現在では香港、シンガポールなどではスタンダードナンバーだ。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。猛暑の本番はこれからですからねみなさん。それではまた明日、おやすみなさい。