愛に恋

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人のセックスを笑うな  山崎ナオコーラ

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39歳の美術専門学校の女性教師と、その学校の生徒19歳の恋愛話だが、男子には、この年頃にありがちな年上願望みたいなものを思い出すかのような小説で、私の場合、18歳当時、5歳年上の人と付き合ってはいたが、流石に20歳上というのは考えたこともなかった。

然し、恋愛というのはいざ始まってみると相手が幾つだろうが、燃え上がる炎は同じで、会いたさ見たさで心は始終落ち着かないのが若気の恋というものだろうか。

本書では意外にも先に声を掛けたのが女性の方で、彼女、結婚はしているが別にアトリエとしてアパートを借りている。

モデルになって欲しい言われ、部屋に誘われ恋が始まり肉体関係へと発展するが、当初、思い描いていた『人のセックスを笑うな』という限りは、あるカップルの性交渉を誰かが見ているのかと思っていたが、そうではない。

糸を紡ぐように徐々に発展していく感情に、どこか頼りなさも交えながら少しずつ彼女の心変りを悟っていく少年の心の綾を描いている。

その昔、結局私も5歳年上の人にフラれたのだが、いつまでも吹っ切れることの出来ない残像が尾を引き、今となれば、それが大人への登竜門のような恋だったのか。

大人の女性は分別を持って去り、ただひたすらに純粋だった少年は辻の往来に茫然と佇む。

恋はいつも意外性を孕んでいる。

意外な出会い、意外な展開、意外な別れ。

文学はそれを描くキャンパスとでも言えようか。 

 

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