愛に恋

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セックス放浪記 中村うさぎ

 
一読して非常に面白い本だと思ったが、ここまで己の性癖を赤裸々に語られると、何か私としては感想文を書くのに簡単そうで実は難しい。
内容的には、この本一冊で「朝まで討論」でも出来そうなくらい充実したものだが、人生観や恋愛観だけではなく、踏み込み過ぎるほどの体験談には、賛否両論の幅がありそうで私自信、彼女の行き方に理解を示しつつ全面的には賛同し兼ねる部分もある。
 
傷つきやすく純粋なのか単なる放蕩癖なのか。
デリヘルで働き3日で11人の客を取った、SMクラブで吊るされた、ハプニングバーで衆目の中、SEXをした、知名度のある女性ルポとしては驚くべき自己暴露本だ。
デリヘルをやるほど「女の価値」の暴落に苦しむと本人は書いているが読むほどに痛々しく切ない。
 
「私に媚びるな。媚びられるのは、一番嫌いなの。本気の言葉だけ、本気の愛だけ、私は欲しい。それが手に入らないなら、いっそ愛なんか、いらない。獣みたいなセックスだけで結構よ」
 
と言い切っているが、その本音の裏側が悲しい。
 
「ああ、哀しい。相手がAV観ながらセックスしてくれるという、そんな立場に立たされた者の屈辱と哀しみを、私はリアルに体験したわ。オカマたちよ、私はますます、あんたたちに近づいてきちゃたみたい」
 
「女としての魅力がなくなるということは、これすなわち男を幸福にする能力がなくなったということである」
 
これはもう単なる快楽の追求ではなく、求め続けても得られない渇望そのもののような気がする。
本人もそれを承知の上での足掻きで、もし私の友人なら何としたろうか。
現実的にはこのような女性と知り合ったことはなく、稀なタイプだと思うがどうだろう?
 
ここまでの体験はしなくとも、50歳を目前に控えた女性の中には、彼女の生き方に共感する人もそれなりにいるのだろうか。
女は男に求められて何ぼということなのか、この手の問題は50歳前後の女性アンケートを一度取ってみたいものだ。
彼女の場合、あくまでも女性であろうという拘りが、人一倍強く、究極の愛の渇望も拘泥しているようで、もしそうなら、これらの根本原因はどこに起因するのか興味深い。
 
一般的な結婚という結果に伴う多少なりの打算というのは、彼女には通用しないのか、私を愛する根拠を証拠立てて、ここで見せてみなさいよ、とまで言われているようで男としてはたじろぐ。
中村うさぎという人はかなり頭の切れる女性だろう。
それだけに全てを見透かされているようで怖い。
見掛け倒しは通用しない。
 
嘘や騙しの通用しない女は、友人としてならいいが、恋人としては彼女が言っているように「痛い女」なのかも知れない。
しかしこれほど興味を湧かせるタイプも確かに珍しい。
内田春菊岩井志麻子などもかなり淫猥な発言をするが、中村うさぎはそれ以上だろう。
 
以前、岩井志麻子「男は捨てるところが無いでしょ」なんていうことを言っていたが、それは性に関して言っているのかどうか。
最近『オバサンだってセックスしたい』なる本を出したところをみると、なるほどと頷くところ大だ。
いずれにしても女性側から大胆に性を語ることが出来る世になったのは歓迎すべきことだ。
是非、一読をお奨めしたい本だ。
 
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