下巻を読み終わって感慨もひとしおだ。
生前、「勲章なんかぶら下げて喜んでいる奴はインポだ」とほざいていたハチローがである。
しかし、弟子の菊田一夫が死んで、号泣したハチローも後を追うようにして逝ってしまった。
下巻では隆盛を誇った、さしもの佐藤家も悉く死に絶え、残ったのは愛子を含め3人だけ。
紅緑の娘が未だ矍鑠として健筆を奮っているが、燃え盛る佐藤家の物語は広く世に広めたいものだ。
ハチローにはこんな詩がある。
「かァさんの手紙を読みました」
かァさんの手紙を読みました
あて字ばかりの手紙です
「からだを大事になさいね」が
ずらりずらりとならんでいました
返事は出さないことにきめました
又「からだを大事にね」が
ならんでくるからです
かァさんの手紙を読みました
あて字ばかりの手紙です
「からだを大事になさいね」が
ずらりずらりとならんでいました
返事は出さないことにきめました
又「からだを大事にね」が
ならんでくるからです
しかし、ハチローの作る詩は空想の産物で、実際には実母との関係は良くなかった。
では泉のように湧き出る、あの才能は何だったのだろうか。
これも文壇二大老と言わしめた紅緑の血を受け継いでのことなのか。
終りにあたって、是非にもこの一説は引用しておきたい。