愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。 『尽用而二分狂言』

歌舞伎の演目に『忍夜恋曲者』というお題がある。(しのびよるこいのくせもの)と読む。そうとう昔のことだが、地下鉄の吊り広告でこれを読んだ時に、実に上手いお題目だと関心したものだ。滝沢馬琴がまだ若い頃、倉蔵といわれていた頃の話、処女作『尽用而二分狂言』(つかいはたしてにぶきょうげん)という戯作を持って山東京伝の屋敷に赴いていろいろ添削してもらったことがあった。いちいち私は感じ入る。上手いお題を付けるものだ昔の人は。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。現代のタイトルではどうであろう。『誰がために鐘は鳴る』なんてどうか、『誰が故郷を思わざる』『地獄に墜ちた勇者ども』『郵便配達は二度ベルを鳴らす』『栄光への脱出』なんて書き出したらきりがないのでやめるとするか。おやすみなさい、また明日。