愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 『牡丹灯籠』

私もオカルト映画というのをずいぶんと観てきたが、何といっても怪談くらい怖いものはない。『四谷怪談』『耳なし芳一』『番町皿屋敷』『怪談佐賀屋敷』そして『牡丹灯籠』だ。もう散々、子供の私を悩ませた作品であった。「其内上野の夜の八つの鐘がボ~ンと忍ケ岡の池に響き、向ヶ丘の清水の流れる音がそよそよ聞こえ、山に当たる秋風の音ばかりで、陰々寂寞、世間がしいんとすると、毎(いつ)もに異(かわ)らず根津の清水下から駒下駄の音高く、カランコロンカランコロンとするから、新三郎の心の裡で、ソラ来たと小さくかたまり、額から顎へ懸けて膏汗(あぶらあせ)を流し、一生懸命一心不乱、雨寶陀羅尼経を読誦して居ると、駒下駄の音が池垣の元でぱったり止みましたから、新三郎は止せばいいのに念仏を唱えながら蚊帳から出て、窃(そっ)と戸の節穴から覗いて見ると、毎時(いつも)の通り牡丹の花の灯篭を下げて米が先へ立ち、後ろには髪を文金の高髷に結い上げ、秋草色染の振袖に燃えるような緋縮緬長襦袢、其綺麗な事云うばかりもなく、綺麗ほど猶怖く、これが幽霊かと思えば、萩原は此世からなる焼熱地獄墜ちたる苦み」屋敷には御札が貼ってあり、二人の女は入ることができない。「米や、どうぞ萩原様に逢わせておくれ。お嬢様、あなたが是程までに慕うのに、萩原様にゃあんまりなお方では御座いませんか」ここが見せ場で、映画で観て御覧なせえ、震え上がること間違いなしでさぁ。「ムーンライト・セレナーデ」です。おやすみなさい、また明日。