愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 魂の行くえ

戦後すぐ書かれた「魂の行くえ」という評論で柳田國男は、こう書いている。日本を囲繞(いによう)したさまざまの民族でも、死ねば途方もなく遠い遠い処へ、旅立ってしまうという思想が、清粗幾通りもの形をもって、おおよそは行きわたっている。ひとりこういう中においてこの島々にのみ、死んでも死んでも同じ国土を離れず、しかも故郷の山の高みから、永く子孫の生業を見守り、その繁栄と勤勉とを顧慮しているものと考え出したことは、いつの世の文化の所産であるかは知らず、限りもなく懐かしいことである。繁栄と勤勉とはいかなかったが、遠く山並みの彼方から、いつまでも父が私を見守ってくれていることを信じて疑わず今日も生きている。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。おやすみなさい、また明日。