そうか、この作者は以前読んだ『定年オヤジ改造計画』と同じ人だったんだ。
今回は、まだ40代なのに脳梗塞で死んだ夫に対して、何の感情も湧いて来ないという主婦の話。
私にはそのような経験がないのでよく分からないが、愛情もなく夫婦生活を続けると或いはそのような妻もいるのだろうか。
以前、読んだ本の中に、日本人は愛情が覚めているにもかかわらず、同じ屋根の下に住み続けることが出来る民族みたいなことが書いてあったが確かにそれは言える。
旦那と旅行なんか行って何が面白いなんていう妻はいくらでもいる。
喫茶店を見てみるがいい。
朝となく昼となく夕方となく、おばさんたちは群れて、いつ果てるともない会話を交え高らかに笑い、まるで自宅のリビングに居るがごとく談笑して他を憚らない。
然し、おじさんはといえば、決して群れない。
第一、毎日会っても飽きないような友達などいない。
自然、おばさんたちは旦那より友達と旅行に行った方が楽しい。
喫茶店で大笑いしている中年夫婦など見かけないのも、そのいい例だ。
本書の主人公は東京生まれで、夫の郷里、長崎に住むようになったが子供には恵まれず、お気に入りのマイホームでこれから悠々と一人住まいを楽しめることが出来るはずだった。
夫の実家は長崎で十八代も続いている名家で資産家。
ある日、義母が息子の為に、予想外に大きな仏壇を買って届けて来た。
それまで義母を尊敬して来た妻は、何の躊躇いもなく合い鍵を使って勝手にお詣りに来ることに不信感を抱き始める。
悪気があってのことではなく、息子が建てた家の仏前に焼香を上げに来るのは親としてあたりまえと謂わんばかりで、ごく自然の振る舞い。
予想外の展開に、さあどうする、あなたならどうする。
義母は、このまま籍を抜かず、将来は義父母を面倒みてくれるものと、当然のように思っている。
まだ再婚の余地を残している年齢だけに複雑な心境になるが、よく出来たお嫁さんと思われ、義母に反抗できない自分にいら立ちを覚えるが、さあ、アナタならどうする。
籍を抜けば、マイホームも手放さなくてはいけなくなり、東京の実家に今更帰るのか。
東京と違って長崎は実に住みよい処。
更には仕事にも充実感があり辞めたくない。
さあ、アナタなら、アナタならどうするんだ!