愛に恋

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むくつけき男

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むくつけき男。
 
あまり馴染みのない言葉だが「野暮ったい、無粋、無風流、あかぬけしない」という意味で、詩人サトウハチローは自らの名前に満足せず、並木せんざなどというペンネームを考え出し、せんざとは別に、サトウハチローでユーモア小説を書かせてくれと頼んでいたとか。
 
サトウハチローにはあまりにも、むくつけき男のイメージがあるというのがその理由。
並木せんざは、いなせな江戸前の男の姿を連想させる名前らしい。
その並木せんざの書いた詩が小気味いい。
 
向こう通るは
せんざじゃないか
一本どっこの博多帯
 
並木せんざは
お江戸の生まれ
しかも色町 柳町
 
このところ羽左衛門(たちばなや)の声色となり
十四の時から色修行
さす盃のうす情け
かわす言葉のかけひきも
紅とぼかしのしぼり染
 
ほろりほろよい
ほんのり染めて
鼻唄まじりの 日和下駄
 
橋を渡るは
せんざじゃないか
柳がまねくよ 向う岸
 
確かに名調子だ。