愛に恋

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毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記 北原みのり

 
 
一般的に毒婦というと、まず思い浮かぶのは高橋お伝阿部定ということになるか。
しかし最近、平成の毒婦と言われる女性が二人も登場した。
片や青酸カリを飲ませた連続殺人事件の筧千佐子容疑者、そしてこの木嶋佳苗
婚活詐欺とでも言うのか短期間に複数の男性を篭絡し易々と金銭を騙し取る手口、ある面、鮮やかとでも言うかマスコミはこぞってこの女を特集した。
 
国民が彼女の写真を見て一様に思ったことはマスコミが言うように「なぜ、こんな女に騙されたのか」と、まずその点に関しては一致した見解だろう。
「ブスでデブ」とマスコミは騒ぎ立てたが、確かに「何故」という文字がこの事件には付き纏う。
被害者は以下のように複数人。
 
F氏 7380万 2007年8月31日死亡
寺田隆夫さん 1850万円 2009年1月31日死亡
安藤健三さん 270万円 2009年5月15日死亡
大出嘉之さん 470万円 2009年8月5日死亡
他に詐欺に遭った男性も何人かいるという。
 
事件が初めてニュースで報じられ被害者の大出嘉之さんがブロガーだと紹介された日、私も彼のブログを尋ねてみた。
何とアクセスとコメント数の凄いこと。
プラモデルが趣味で最後の日の記事は「今日、相手の御家族と会う」と書かれていたのが印象深く哀しかった。
しかし彼は、相手の家族に会うことなく不自然な練炭自殺者とした車中で見つかった。
 
この本の追及するところは文字通り「何故」である。
何故、男たちは易々と佳苗に金を渡し殺されていったか。
著者は100日間、裁判を傍聴して同性である佳苗の性格を何とか抉ろうと、まるで肉薄せんばかりに観察している。
 
「佳苗は同情を求めないが、男たちが求める”女”については熟知していた」
 
ある面、毒婦と呼ばれた女たちは計算高く賢い一面を持っている。
一説に「料理が得意な女はアレも上手」なる話しを聞いたことがあるが、確かに佳苗は料理が上手かった。
公判中、佳苗は問われるままにこんなことを言っている。
 
「男性たちには褒められました。具体的には、テクニックというよりは、本来持っている機能が、普通の女性より高いということで、褒めて下さる男性が多かったです」
 
つまり自分のアレは名器だと公言している。
これを聞いて女性記者の間では・・・!
 
「みみず千匹ってこと?」
「かずのこ天井!?」
「私、褒められたことない」
 
など騒がしかったとある。
しかし、この佳苗という女性、確かに普通の女とは違う。
常に服装は派手でカットソーというのか胸を大きく開き谷間を見せる出で立ちで現れる。
色白で物腰は優雅。
まるで犯罪者特有の落ち着きのなさというものが見当たらない。
 
そして詐欺師たるべき努力も怠らない。
日々、複数の男性と会い、毎日のようにブログを更新。
多い時はひと月で120の記事をアップ、料理も年間、2千件の写真を掲載。
2009年には50万件アクセスというから、大人気ブロガーと言ってもいいだろう。
 
佳苗にとって結婚とは条件の交換みたいなもので、男性は経済を女性はセックスを提供する。
しかし一般人が見る佳苗像とは、やはり、この女がどうして毒婦に成り得たのかという点に尽きる。
思うに彼女はかなり頭がいい。
例えば検察側の質問に、大出さんとのセックスが不満だったというくだり、彼女はこんな風に答えている。
 
「私がセックスにおいて到達点と考えている世界を共有できなかった」
「到達点とは?」
「私は、セックスにおいて長時間快感を持続させながら、トランス状態でオーガズムを感じてトリップすることを求めていましたので・・・」
 
裁判所内でこんな答弁を普通出来るだろうか。
それはまるで「あなたたちの知らない世界に私は行ったことがある」という誇らしげな答えだったと著者は書いている。
しかしこの事件の不可思議さは、何と言うか残酷さの希薄にある。
被害者はみな睡眠導入剤を飲まされ練炭で殺害されているため眠ったまま逝ってしまい血痕というものがない。
更に被害者と加害者の感情的対立点もない。
 
だが、いつもこの手の大量殺人には疑念が残る。
連続殺人はいつかバレるということを考えないのだろうか。
一度この手の味をしめたら二人殺すも三人殺すも一緒という考えに陥ってしまうのか。
 
「何が彼女をそうさせたのか?」
 
この手の犯罪心理は果たして解明されるものなのか。
 
「そうか、そういうわけだったのか」
 
などと、心理状態に理解を示せるとも思えない。
毒婦には毒婦の理論があるでは通用しない。
 
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