愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。 『厄払い』

私みたいな凡夫には苦手な職業が多すぎると密かに思っている。取り合えず絶対できないと思うものは二つほど挙げてみろと言われれば、先ず声優と噺家だ。滑舌の悪い私には不向きというか逆立ちしても無理な仕事だ。そういう意味ではアナウンサーもダメだろう。横文字、カタカナなどは滑らかに話せない。洋画の吹き替えなんかやっている人は本当に凄いと思う。落語家はどうかといえば、昔は今のようにカセットやDVD,またはyoutubeなんか無いので師匠に口伝で教わるらしい。古典落語などはそもそも基となる本がない。故に自分の師匠や他の師匠の家に出向いて噺を聞きながら修行をするってんだから、あんな長いものを暗記するなど出来ない。一席分覚えるのも大変なのに噺をいくつも覚えなきゃならねえ。ちょっと落語調になってきたな。例えば『厄払い』という噺。伯父さん「あ~らめでたいなめでたいな、今晩今宵のご祝儀に、めでたきことにて払おうなら、まず一夜明ければ元朝の、門に松竹、注連飾り、床に橙鏡餅、蓬莱山に舞い遊ぶ、鶴は千年、亀は万年、東方朔は八千歳、浦島太郎は三千年、三浦の大助百六ツ、この三長年が集まりて、酒盛りをいたす折からに、悪魔外道が飛んで出で、妨げなさんとするところ、この厄払いがかいつかみ、西の海へと思えども、蓬莱山のことなれば、須弥山(すみせん)の方へ、さらぁ~りさら~り」って、これを言って豆をおあしをもらう。」たったこれだけ覚えるのも難しい。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。つまりは何をやらせても一人前にはならない木偶の坊みたいな者だ。おやすみなさい、また明日。