愛に恋

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サロメ 原田マハ

本作はワイルドやイラストレータのオーブリー・ビアズリーより、女優の姉でメイベル・ビアズリーの視点で書かれているように思う。弟の才能を天才と信じるメイベルは、危険な男ワイルドと弟が知りあい接近し『サロメ』の挿絵を描いて、その名を広く世に知らしめ、ワイルドの作品は永遠の命を与えられたと、つまり、ビアズリーの挿絵があったからこそ『サロメ』は永遠に人々の記憶に残ったともいえる。確かに一度見たらビアズリーの絵は忘れられないほどの独創力がり、誰もが記憶に残る。当時からそれは人々に認知されていたのであろう。だが、姉はワイルドの男色を危険視し、弟が彼に接近しすぎるのは激しく拒み、ワイルドの恋人アルフレッド・ダグラスと口論してまで弟を守ろうとする。ワイルドは「あらゆる芸術は不道徳なものである」と言っているが『サロメ』は聖人殺害という禁断のテーマを取り上げた問題作。当時の英国では男色は犯罪とされていた。世紀末の天才画家ビアズリーは25歳で結核で亡くなり、ワイルドは罪に問われ牢獄行きになる。大変、面白い作品だった。