愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 水草の後もうるわし恋文を

ある本に、花魁になるために一番の習い事はなんだとお思いになる? 人によって多少いうことはちがうだろうが、わしならまず書を挙げる。水草の後もうるわし恋文をもらったら、客人はすっ飛んで会いに来るだろうし、金釘流じゃ愛想も小想も尽き果てたといわれかねない。そこでまず書を習い、次に気の利いた文句のひとつやふたつひねり出す心得として、歌や俳諧を学ぶんだよ。書はよく書き手の性根をあらわすなんていうが、私が16歳の頃、ひとつ年上の女性からフラれ大失恋を味わっていたとき、短大生だった19歳の女性から『ハイネ詩集』の本を貰った。その末尾の1ページに見たこともないような達筆で、励ましの言葉が小さな字で一面びっしりと書かれていた。確かに美なる筆さばきには心打たれ、恋心さえ芽生えそうだった。今も大事に持っている。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。実は明日の早朝から例によって例の如くペット検査があります。癌の転移を調べるんですね。結果は来週の月曜。まったく重い診断だ。おやすみなさい、また明日。