愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

バナナ 獅子文六

筑摩書房復刊の獅子文六作品をかなり読んできたが、当初はお手軽な娯楽小説みたいなものと、軽く受け流しを決め込んでいたのだがさすがに明治人、語彙力があり思考にしても表現力にうま味がある。 明治大学の斎藤孝先生が「語彙力こそ教養である」と言う通り…

Judy Clay - Lonely People do Foolish Things

www.youtube.com 先日、津川雅彦さんが亡くなったが、なんでも津川さんは5回も徳川家康を演じたらしく、その中でも江守徹が石田三成に扮した時代劇ドラマで二人の別れの場面が印象に残る。 床几に座る家康、砂利の上に座らされる三成。 光成の言い分を聞き終…

「上海東亜同文書院」風雲録―日中共存を追い続けた5000人のエリートたち 西所正道

去年、長い間探しあぐねていた父の引揚げ記録が本籍の県庁に保管されていることが分かり、早速取り寄せてみた。 そこに書かれていた父直筆の「引揚状況等に関する申立書」を見て驚いた。 昭和12年8月、「軍からの徴用で上海東亜同文書院中退」とあり、さらに…

阪神 夏の古書市

まったくなんてこった! 50冊ほどもあった未読本をやっと24冊まで減らしたと思ったのに、この3日で12冊も増やしてしまった。 あれほど気持ちを引き締め減らすことに専念して来たのに。 『古本病の罹り方』というありがたいような、ありがたくないような本が…

D.G.ロセッティ ラングラード

本書を読んで、あるひとつのことを学んだ! それは、もう二度とみすず書房には手を出さないこと。 これで三度目となったみすず書房。 『イェルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告』ハンナ・アーレント 『メリー・スチュアート』 ツヴァイク 『D.G.…

東條英機の妻・勝子の生涯 佐藤早苗

映画『日本のいちばん長い日』は、取り分け私の好きな映画で、これまで何度も鑑賞しているが阿南陸相演じる三船敏郎は言うに及ばず、クーデターに参加した畑中少佐を演じた黒沢年男の演技も光っていた。 中でも見せ場は森近衛師団長殺害の場面だが蹶起失敗に…

活字と自活 荻原魚雷

高円寺に住む、古本が大好きで貧乏な物書きの話しで目標は! 「10年この町に住んで、そのとき文章を書き続けていたら、俺の勝ち」 というもの。 高円寺の一画で安アパートを7回も転居しながら四苦八苦。 時に電話、ガス、電気、水道も止まり立ち退き2回。 何…

袴田事件を裁いた男 尾形誠規

戦後に起きた重大事件に関しては大抵の場合、少しぐらいの予備知識があるのだが、この袴田事件については名称以外は全く何も知らなかった。 先日、冤罪事件として拘置所から釈放される袴田さんを見て、どのような事件だったのかと思っていた矢先、この本の出…

夭折の画家 佐伯祐三と妻・米子 稲葉 有

佐伯祐三が画家の道に進もうと思った動機は武者小路実篤の『その妹』を読んで感動したからとある。 戦地で失明し、画家になれなかった主人公に代わり自分が絵の道に進みたいと思い、武者小路にファンレター送ったと。 その手紙を武者小路家に出入りしていた…

島田清次郎 誰にも愛されなかった男 風野春樹

島田清次郎という小説家をいつ、どのように知ったのか全く覚えがないが昭和37年に直木賞を受賞した杉森久英氏の『天才と狂人の間』という伝記小説を古本屋で探し出して以来の対面となる。 今日、島清こと島田清次郎の名を知る人は少なく、その作品を探すのさ…

自分をつくる 臼井吉見

故臼井吉見さんの作品には『安曇野』という大作があるが結局読んでない。 唯一、この人の作品で読んだのは川端康成の死の原因を追究した『事故のてんまつ』という本だけだが既に絶版になっている。 『自分をつくる』というタイトルから分かるよに、私には似…

海の祭礼 吉村 昭

久しぶりの吉村昭作品。 この人の本は歴史小説というより記録文学と言った方が正しいかも知れない。 それ程までに緻密さが随所に表れ小説という割には会話が少ない。 司馬作品が歴史の本流なら吉村文学は埋もれた脇役達の発掘作品と言ってもいい。 幕末もの…